朝日「軍艦島の徴用工虐待」社説に元島民は激怒 “姑息な回答”に更に深まる疑惑

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結論ありきの社説

 加藤センター長に取材を依頼すると、「元島民の皆さんに対する回答から、朝日新聞が公文書や判決文といった信頼に足る資料を提示できなかったことが、明白になったのではないでしょうか」と指摘する。

「私たちは端島炭鉱で生活していた人々から直接、お話を伺いました。一方、朝日新聞の社説を執筆された論説委員の方は、元島民の肉声を聞いておられません。委員が耳を傾けたのは、韓国のごく一部の人々、それもある種の“運動家”とでも形容すべきグループの主張だったのではないでしょうか」

 朝日新聞の回答と社説を重ね合わせると、「一般的に日本人は朝鮮半島の徴用工を虐待していたのだから、端島炭鉱=軍艦島でも同じことが行われていたと考えて当然だ」と主張しているようにも読める。それでは順番が逆だろう。

「端島炭鉱を巡って、これまで様々な言説が流布してきました。私たちは実際に島で生活した人々の証言を集めました。全て歴史的な検証に耐えうる証言ばかりです。ところが朝日新聞は、『日本人は半島出身の徴用工を虐待した』という特定の歴史観を重視し、元島民のリアルな証言を軽視しているように思えます。もしそうだとすれば、結論ありきの社説ということになってしまうでしょう。真実を追求するジャーナリスト、社会の木鐸たる新聞社の態度として相応しいのか、疑問だと言わざるを得ません」(同)

歴史の多様性

 朝日新聞の社説から浮かび上がる歴史観は、単一で平板なものだ。「日本人は半島出身者を虐待した」という主張以外は、なるべく無視しようとする。だが加藤センター長は「本来、歴史というものは多様性を持つものです」と指摘する。

「これまでに、端島で暴行や虐待が行われていたと証言した韓国人の方がおられるのは事実です。その一方で、虐待など全くなかったと反論する元島民のような方々もおられます。現在でも正反対の証言が共存しています。当時であれば、より多様な考え方を持つ人々が、戦時下の日々を懸命に生き抜いていました。そうした多様性を私たちは前提として、今後も一次資料を精査し、様々な証言を収録して保存していきます。それこそが歴史的事実に肉薄していく唯一の方法だからです」(同・加藤センター長)

 加藤センター長は7月22日付の質問状で、朝日新聞に対し追加質問を行った。端島での強制労働や虐待の根拠となる「さまざまな公文書」と「研究発表」の具体的な資料名、「裁判の具体事例」の“ご教示”を改めて依頼するものだ。

 同じ8月11日付で加藤センター長にも回答が送付された。だが、その内容は一字一句、島民の会に対するものと同じだった。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月24日掲載

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