朝日「軍艦島の徴用工虐待」社説に元島民は激怒 “姑息な回答”に更に深まる疑惑
三菱マテリアルは否定
この記事で産業遺産情報センターのセンター長を務める加藤康子氏が取材に応じ、以下のように経緯を説明している。
「社説を見た元端島島民より、『えっ! 政府が端島への労務動員時の暴力や島での強制労働を認めた公式文書や裁判記録があるの?』とお問い合わせがありました。というのも、社説は戦時中朝鮮半島出身者への虐待がなかったという元島民の証言の信頼性を、根本から否定する文脈で書かれているからです。センター開設にあたり、私たちは夥しい量の一次史料に目を通してきました。しかし、朝鮮半島から端島への労務動員で、《暴力を伴うケース》や、端島での業務で《苛酷な労働を強いた》ことを報告する公文書も、国内裁判事例も、見たことがありませんでした。そこで7月9日付で朝日新聞の社説がこのように書いた根拠を示してもらうために、質問状を送ることにしました。《公文書》と《裁判》という記述の根拠について、ご教示を依頼するものです」
加藤センター長の指摘を続ける。
「元島民たちも弁護士を通して、当時、端島炭鉱の経営にあたっていた現在の三菱マテリアルに『端島炭鉱(軍艦島)等に関する事実確認の申入書』を7月10日付で送付しました。申入書で、『朝鮮半島出身者に対する暴力や虐待、差別的な扱い、苛酷な強制労働を強いたといった被害を訴える裁判の被告となったこと、被害が認定された裁判が存在する事実はありますか?』と調査を依頼したのです」
“怒りの質問書”
朝日新聞に取材を申請すると文書で回答があったため、デイリー新潮の記事で全文を掲載した。以下の通りだ。
《読者からのご意見ご感想や取材対象・関係者からの問い合わせ等について、本社は社外に公表することは原則として致しません。貴誌は7月9日付社説の根拠についてお尋ねされておられますが、社説に記述しました通りです。日本各地で労務にあたった朝鮮半島からの労働者につきましては、さまざまな公文書などが存在し、研究発表もなされているところです。よろしくお願い申し上げます》
朝日新聞は7月16日に加藤センター長にも回答した。デイリー新潮に対する回答にある《日本各地で労務にあたった》から《研究発表もなされているところです》の部分は、加藤センター長への回答書とほぼ同じ内容だった。公文書や判例について具体的に質問したはずだが、朝日新聞が出典を明示することはなかった。
一方、元島民が設立した「真実の歴史を追求する端島島民の会」も、顧問弁護士を通じて朝日新聞に「質問書 兼 要求書」を7月27日付で送付した。内容を要約してご紹介する。
▼端島炭鉱=軍艦島の実生活を知らない者が社説を読めば、朝鮮半島出身者に対して暴力や虐待、差別的な扱い、苛酷な強制労働などが端島で行われていたと理解してしまう。
▼こうした事実に反する虚構を読者が信じたり、センターの聞き取り調査に元島民が嘘の証言を行ったと見なされたりすることを危惧しており、社説に対して怒りを覚えている。
▼上記の被害事実を認定した日本の裁判が存在するか否か、書面でご回答いただきたい。
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