卓球「ドリームマッチ」に伊藤美誠が出ない納得の理由 すべては金メダルのため

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 経営難が囁かれる卓球プロリーグ「Tリーグ」が9月に「2020 JAPAN オールスタードリームマッチ」を開催する。だがそこにあの“スーパースター”の名前はない。

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 実はこのイベント、Tリーグがクラウドファンディングで運営資金を募ったところ、目標を大きく上回る金額が集まったという、ファン待望の大会なのである。無観客で行われる試合は無料でネット配信され、通常ではありえない男女混合シングルス戦など趣向を凝らしたものになっている。

 ところが、現世界ランキング2位で東京五輪の金メダルが期待される伊藤美誠(19)は出場を辞退している。

 所属のスターツによると、

「1年後の東京五輪を見据え、日々強化に努めております。残念ながら参加は見送らせていただきますが、引き続き応援よろしくお願いします」

 画竜点睛を欠くイベントになり、運営側も肩を落としていることだろうと思ったが、Tリーグ理事長補佐を兼ねる宮崎義仁・日本卓球協会強化本部長曰く、

「選手がどの試合に出るかは、あくまでも本人の判断が尊重されますから。我々から“出てください”なんて言ってはパワハラになりかねません」

 そりゃそうだが……。それにしても、コロナで試合そのものが貴重な今、美誠はなぜ出場を辞退したのか。

すべては“金”のため

「卓球界を盛り上げることを考えるなら出た方がいい。それは伊藤選手本人が一番わかっているはず。それでも出場しないのは、ひとえに彼女にとってはメリットがないからです」

 と解説するのは、卓球に詳しいジャーナリストの青柳雄介氏である。

「伊藤選手の実力は国内ダントツ。ドリームマッチには海外勢も出場する予定ですが、トップ選手とは言い難い。つまり、彼女にとっては格下ばかりなんです」

 張本智和ら男子のトップ選手とも戦えるが?

「できてもせいぜい1、2試合で、余興扱いでしょう。そもそも男子の卓球と女子の卓球は全然違います。パワーで押す男子は台から離れた“中・後陣”で大きなモーションを取って戦いますが、女子は台に近い“前陣”でスピード勝負することが多い。見るには楽しいかもしれませんが、練習にはなりません」

 青柳氏によると、美誠が出場しない理由はもう一つある。それは、かの福原愛と比較するとわかりやすい。

「福原さんは国内外問わずさまざまなイベントや大会に顔を見せて、ファンを喜ばせていました。ですが、試合をする以上、無様なプレーは見せられない。そのための練習が必要で、そこに時間を奪われて、弱点克服のような根本的な練習が疎かになっていました」

 福原が我が国の卓球を牽引したのは間違いない。だが、弱点のフォアを克服できず、結局、世界の頂点に迫ることはなかった。一方、美誠もフォアが苦手だったが、練習を重ねた末、今やそれは“みまパンチ”という武器になっている。

「ある国際大会で彼女はメダルを紛失したことがあるんです。お母さんががっかりしていたら、彼女はケロリとして“五輪で金メダルを獲ってきてあげる”と」

 強くなるため、具体的にいえば五輪で金メダルを獲るためには全てを擲(なげう)つ。それが伊藤美誠、なのである。

週刊新潮 2020年8月13・20日号掲載

ワイド特集「コロナ禍の女」より

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