政府の本音「コロナで死者が出るのは仕方ない」を解説 いま経済を回す意義とは
重症者が増えない
菅官房長官も「大事なのは重症者数」と、繰り返し訴えている。しかし、現状ではウイルスの怖さを煽る論者の、「重症者はこれからどんどん増える」と重ねて訴える声にかき消されている。そうであれば、政府はいまの感染状況をもっと具体的に示すべきだろう。
ここでは、経済学者でアゴラ研究所所長の池田信夫氏に説明してもらうと、
「新規陽性者は大きく増えていますが、判明した陽性者が4月ごろのように発症していて、場合によっては亡くなるような患者なのかどうか、東京都はまったく発表していません。僕が調べたかぎり、陽性者の半分以上は無症状だと思われます。というのも、東京都で累計1万人以上が陽性になっているのに、重症患者はいま十数人しかいない。以前は症状がある人を検査していたので、ほぼ100%が“患者”でしたが。それなのに、現在の陽性者数を4月とくらべるのはナンセンス。7月に入って亡くなったのも、東京では高齢者中心に6人だけ。こんな状況で緊急事態宣言を出せば、世界の笑い物です」
内科、循環器科医で、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏も、
「60歳以上の患者数が何人で、重症者が何人かが大事なんです」
と言って、こう続ける。
「今日診察した80代の方も、先月まで自転車で来ていたのに、外出しないので足腰が弱くなって、人に連れられタクシーで来られました。認知症の症状が出た人もいます。何カ月かの自粛でこれです。散歩しなさい、人と喋りなさい、と言っても、みな怖がって外出しません。僕が診ている範囲だけでも、何人ものお年寄りがそうなっているのだから、全国ではかなり多くの人に影響が出ているはず」
だから感染者数に振り回されるのは愚かだ、と説く。暖房をかけないと、コロナ弱者たる高齢者の命も逆に危険にさらされる、という話で、政府もそう認識しているに違いない。
「私は“TOKYO自民党政経塾”の塾長を務めていて、先月14日、コロナの影響で開けずにいた講義を行った。そこに西村大臣も駆けつけてくれ、日本は死者数の抑え込みに成功していること、医療供給態勢や治療薬開発の見通し、GoToなどの経済支援策について話してくれました」
と話すのは、郵政相などを歴任した元代議士の深谷隆司氏である。
「ワイドショーは危機感を煽っていますが、経済活動がストップしたままで不況が続けば、困窮者が大勢出る。一般的に、失業率が1%上がると、自殺者が4千人増えるといわれます。西村大臣は、コロナによって失われる命と、経済苦によって失われる命を両方考えなきゃいけない。だから、アクセルとブレーキを使い分けながらがんばっているんです」
新型コロナによる死者が何人か増えるのは仕方ない。トータルの犠牲者を減らすことが肝要だ、と。それは本誌の主張であり、政府の本音とも推察されるが、政府がそれを表明する難しさを、石蔵氏は指摘する。
「(ロックダウンを行わない)スウェーデンでは、施設におられる超高齢者の死亡が多く、国を止めるほどのことではない、という国民的な合意が得られている。トランプ大統領やブラジルの大統領は、信念をもって“多少の死者が出ても経済を回す”と言っている。でも、それを日本で言ったら非難が殺到します」
たちまち「人命軽視!」の声の下、安倍政権は大炎上、支持率も暴落するに違いない。だが、そうした声をあげる人は、新型コロナ対策の弊害によって失われるほうの命は、なぜ軽視できるのだろうか。ともあれ、政府が本音を伝えられない以上、感染者数だけが独り歩きし、国民の間にいたずらに恐怖感が増している。
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