両陛下がコロナ禍に“沈黙”される理由 欧州王室の対応と比較

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「Zoomを用いては」

 先の君塚教授が言う。

「イギリスではコロナ禍の中でも、キャサリン妃がインスタグラムを活用してボランティアに謝意を表するなどし、また6月にはエリザベス女王がZoomで会議を行った様子も公開している。こうした英王室のインターネット活用に国民の87%が賛成しているとの調査結果もあるのです」

 翻って日本では、

「宮内庁のHPは新年やお誕生日を除きほとんど動画はなく、肉声も流れません。欧州の王室に比べ、百歩も二百歩も遅れていると言わざるを得ません」(同)

 17年には皇太子時代の陛下が、ご訪問先のデンマークで地元の人との“自撮り”に応じて話題となった。

「陛下ご自身は、新しい技術を用いて国民と触れ合うことがお好きなのではないでしょうか。いずれにせよ、SNSを活用していないのは日本の皇室くらいで、早くその一歩を踏み出すべきです。各国の王室は英国を見習い、例年クリスマスメッセージを出しますが、宮内庁はまず、新春メッセージをメディアで流してみるなど試みてはいかがでしょうか」(同)

 皇室制度に詳しい名古屋大学の河西秀哉准教授も、

「ご進講の際のご発言も、例えば赤十字社社長の時に陛下は『心ない偏見に遭う方もおられると聞き心配しています』と、かなり強いお言葉を出されています」

 としながら、

「こうしたお言葉が一般国民に届いているかといえば、必ずしもそうではありません。マスク姿の両陛下がご進講の専門家と向き合う“絵”ばかりだと、どうしても同じに見えてしまい、テレビなど映像メディアは大きく取り上げづらい。そこで、Zoomなどを用いて、陛下が医療従事者にお声を掛ける姿を公開してもいいのではないでしょうか。そのお姿が“絵”としてテレビで報じられれば、両陛下が国民を励ますお姿がいっそう国民に伝わるはずです」

 いかなる形であれ今後、その肉声が国民に向けて発せられれば、この上なく喜ばしい。役所が旧態依然では、両陛下の進取のお気持ちも届かずじまいなのである。

週刊新潮 2020年8月13・20日号掲載

特集「天皇の沈黙」より

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