両陛下がコロナ禍に“沈黙”される理由 欧州王室の対応と比較

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記者会にアイデアを募集

 そうした状況を裏付けるかのように、宮内庁幹部と記者会との間では先ごろ、以下のようなやり取りが交わされていた。

「7月9日の侍従レクでは、コロナ関連のご進講が対面で行われている点について、侍従次長が『両陛下はこれまで、面と向かって生の声を聴き、直接ねぎらいたいというお気持ちでなさってきた。皇嗣殿下(秋篠宮さま)は基本的にリモートのお考えだが、両陛下は今後とも直接お会いする』と、両家のスタンスの違いにも言及し、ご進講者の人選がそもそも両陛下のメッセージであるとの見方を示しました」(前出記者)

 ここで記者から、

〈地方行幸啓も中止となり、象徴天皇の活動としては隔靴掻痒の感がある。こういう状況だからこそ、新しい方法でお気持ちが伝わるご活動を検討しないのか〉

 との質問が出たのだが、何と侍従は、

〈重要な問題。我々もお支えする立場で日々考えているが、皆様からもよい考えがあったらぜひ頂きたい〉

 などと、両陛下の「新しい生活様式」に関するアイデアを記者会に呼びかけたのだった。

「こんな呼びかけは前代未聞で、記者側は『こちらが申し上げるのは僭越です』と応じたのですが、侍従は『個別に教えて頂いても構いません』と、大いに乗り気でした」(同)

 実は陛下は即位前、周囲に「SNSを使うのはどうでしょうか」と尋ねられていたというから、あるいは職員を通じて外部のアイデアを取り入れ、活用なさりたいお考えもあったのかもしれない。が、その後も進展はみられなかったようで、7月22日の侍従レクでは、両陛下の多岐にわたるご進講や接見など、スケジュールが紹介されたのち、ある“事件”が勃発した。

〈これらが国民へのメッセージを含むというのなら、何回繰り返しても厳しいのではないか〉

 と、ベテラン記者が口火を切ったというのだ。

「この記者は『なにか知恵があるわけではありませんが』と前置きしながら、『コロナや豪雨災害でのご進講を重ねても、活動なさらないと象徴性は発揮できないのではないか』と苦言を呈し、続けてなんと『現在の動けない状況は、象徴たり得ないと思います。重大な岐路にあるのでは』とまで畳みかけたのです。これに侍従は平静を装い、『ありがたく拝聴します。皆さんからご意見頂ければ』と、なおも“公募”を呼び掛けていました」(同)

 お姿が目立たないことで国民から批判の声が上がっているわけではないが、新時代に降って湧いた危機に際し、ノーアイデアの宮内庁。その苦境が見て取れるのだが、先の原教授は、

「結果として天皇・皇后は現在、皇居以外への外出をしないことで『ステイホームに徹する』という一つの規範を示しているとも言えます。仮にお言葉として『積極的な自粛』を口にすれば間接的な政権批判とも捉えられかねず、その可能性がある以上は控えなくてはならない立場です。例えば政府はGoToキャンペーンを呼び掛けていますが、自粛に関する天皇のそうしたお言葉が出れば、天皇を持ち上げて政府を貶めるといった政治力学が働いてしまう恐れすらあるのです」

 また、先の宮内庁関係者もこう指摘するのだ。

「震災時のように、被災者に寄り添って慰撫するのならばともかく、現在の状況で国民の行動に関して言及なされば、おおむね政治性を帯びてしまう。今後、新しくメッセージを発せられるとしても、4月10日のご進講におけるご発言がギリギリの線でしょう」

 ただ平成の時代、当時の両陛下は災害に際し、実に迅速に対応なさってきた。

「今回はケースが異なるとはいえ、もしご在位中ならば、皇室の“名プロデューサー”でもある美智子さまのご機転で、すみやかに“行動”に移されたのではないでしょうか。令和の両陛下は、そうした行動に二の足を踏んでいらっしゃるようにも拝察いたします」(同)

 一方で、4年前に上皇さまがビデオメッセージにて生前退位のご意向を示された際、「憲法に抵触するのでは」といった批判も一部に起こり、政府との軋轢を生んだのは記憶に新しい。

「そうした事情を宮内庁はもちろん、両陛下もよくご存知です。また、皇后さまがかつて外交官という“政府の一員”であったことも無関係ではありません。『今は政府にお任せすれば』といった“ご配慮”の姿勢が窺えなくもありません」(同)

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