渡哲也さんを偲ぶ 伝説のドラマ「西部警察」の澤田幸弘監督が語る“大門圭介の演じ方”

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 日活出身の大スター・渡哲也さんが8月10日に肺炎で逝去した。78歳だった。映画のみならず、数々のテレビドラマでも活躍した。主演ドラマ『西部警察』(テレビ朝日)の監督の1人だった澤田幸弘氏(87)が、渡さんと伝説のドラマを振り返る。

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『西部警察』は全3部作で、1979年10月から84年10月までの間、計238話が放送された。全話に登場したのは渡哲也さんだけだ。

 渡さんの役柄は、西部署の部長刑事・大門圭介。通称「大門軍団」の団長である。トレードマークはレイバンのサングラスとスリーピースのスーツ、そして角刈り。自分に厳しいストイックな男だった。

「撮影所に入った時から出るまで、大門になりきっていましたよ。そうじゃないと、あの役はできないんじゃないですか。なりきっていたから大門役が自然体でやれたのでしょう」(澤田幸弘監督)

 渡自身は温厚な人格者で、人前で声を荒げないことで知られていたが、大門は勇猛で厳しかった。悪党には一切容赦しないし、仕事をおろそかにする若手刑事にも怒声を浴びせた。渡さんの実像とは随分と違った。

 ただし、責任感の強いところは渡さんも大門も一緒。『西部警察』はカーチェイスや爆破、格闘など激しいシーンが売り物だったが、渡さんはスタントマンを使おうとしなかったという。

「爆発寸前に建物から飛び出すシーンや、ビルから落下するシーンなども、自分でやりました。アクションを売り物にした日活出身者のプライドもあったのだろうが、それよりも考えていたのはスタントマンのこと。自分の代わりに危険なことをやらせて、その人がケガをしてしまうことを心配していた。渡さんはそこまで考える人でした」(澤田監督)

 ヘリコプターから垂らされたロープにぶら下がったこともある。そこからショットガンを撃った。危険極まりないが、これも自分で演じている。

「(DVDなどで)『西部警察』をよくご覧になっていただくと、渡さんが自分で危険なシーン演じているのが分かります。スタントマンがやっていたら、体型が違うので、すぐ分かりますよ」(澤田監督)

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