ヒュンダイの日本再進出…韓国国民の信用ゼロだから行った空しい衝突実験の顛末

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ヒュンダイや起亜が韓国市場をわざと低く扱っているのではという不信

 韓国人のヒュンダイと起亜に対する不満の2点目は、韓国内で売られている車が、輸出仕様と比べて、装備や品質、耐久性で劣っているのではないか。すなわちヒュンダイや起亜が、韓国市場をわざと低く扱っているのではないかという不信感である。

 自動車という工業製品は、その輸出先や販売地域によって細かく仕様を変えることが一般的である。輸出先国の関連法規や気候(熱帯や多湿、寒冷地など)、消費者の志向に対応するための仕様変更である。しかし韓国車、特にヒュンダイ車及び起亜車の場合、なんと国内仕様と輸出仕様の防錆処理についても差をつけているのだ。

 具体的には国内仕様の場合、車体の鋼板に亜鉛メッキ処理を行なわかったり、比率を低めたりしている。当然のことながら、生産から10年以上経過した韓国国内仕様車は、まさに錆でグサグサとなり、オーナーを悩ませている。一方で海外に輸出された同年式、同型車は、今もかの地できれいな状態で走り回っているのだ。

 他にも韓国のネットを覗くと、ヒュンダイ車の国内仕様と海外仕様の違いについて様々な書き込みが溢れている。エアバックの仕様、サイドインパクトバーの取り付け位置、そしてボディの鋼板の厚さまで違うといった具合である。

 当然、自国企業が自国民を軽く扱うのを快く思う人はいない。近年ではヒュンダイも、国内消費者のこのような憂慮をかき消すためにリコール車両に永久保証を付けたり、品質についての積極的なマーケティングを繰り広げている。

国内仕様と米国仕様の間に安全性の違いがないことを証明するため

 2015年8月22日、ヒュンダイは看板モデルであるソナタのデビュー30周年記念イベントに先立ち、公衆とマスコミの面前で、国内仕様のソナタ(韓国アサン工場製)と米国仕様(アラバマ工場製)を時速56kmでフルラップ全面衝突させるデモンストレーションを行った。

 国内仕様と米国仕様の間に安全性の違いがないことを証明するために行われた、このデモンストレーション。10億ウォンの予算がつぎ込まれ、著名な大学教授をアメリカ現地に派遣して衝突実験用車両を選ばせるなど、疑惑を払拭したいヒュンダイの意気込みが感じられるイベントであった。

 ヒュンダイ側関係者は、このデモンストレーションによって、国内仕様と海外仕様の間に安全性の違いがないことを証明できたと自画自賛している。実際、2台のソナタはいずれもフロント部分が大破したもののAピラー以降の部分に大きな変形は見られず、エアバックも正確に作動していた。デモンストレーション自体は成功したといえるだろう。

 1985年にデビューしたヒュンダイ・ソナタは、日本人にとってのトヨタ・マークⅡのような「とても身近な、いいクルマ」として韓国人に寄り添ってきたベストセラーカーである。そんなヒュンダイ、そして多くの韓国人にとって特別な車種の30周年を祝う席で、宴の主人公を衝突させなければならないほど消費者から疑われている現状をどう考えるのか、再度ヒュンダイ側関係者に聞いてみたい。

おさぴょん
会社員として働く傍ら、2002年より韓国の雑誌でライターとして活動中。主に韓国、台湾、タイなどの自動車産業やエンタメについての記事を配信している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月15日掲載

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