夏の甲子園 「ティモンディ」が今も忘れない名勝負 2018年「済美VS星稜」

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僕があの場面で打席に立っていたら

――そしてついに、試合は決着のときを迎えます。まさに衝撃の結末でした。

前田:ノーアウトでランナーが一、二塁から、9番の政吉選手が見事なセーフティバントを三塁前に決めて、ノーアウト満塁にするんです。

――そしてここで1番の矢野(功一郎)選手が打席に入るんですが、カウント1-1から3球ファウルで粘ったあとの6球目でしたね。

前田:打った打球が大飛球になってライトへ飛んでいったんです。

高岸:しかも、切れるか切れないかっていう、微妙な当たりで……。

――それがなんとライトポールを直撃する逆転満塁サヨナラホームランとなりました。

高岸:もう、ホームランと分かった瞬間に、僕ら量販店のテレビの前でガッツポーズしての大喜びですよ。

前田:しかも第100回の記念大会で、あんな劇的なサヨナラ満塁ホームランで決着したんですよ。あんな試合展開はプロ野球ではあまり観れないというか、あれが高校野球の魅力というか。

 もう一つ付け加えると、あのホームランは夏の甲子園100回大会のなかで史上初の逆転満塁サヨナラホームランだったんです。今まで甲子園の歴史になかったっていうことを考えると、かなりたくさん歴史上の熱戦があるなかで、あの一戦は、まぁないんじゃないかなっていうぐらいの劇的な試合だったと思ってますね。

――後輩があれだけの試合を見せてくれたのだから、先輩の俺たちももっと頑張らなきゃ、みたいな力がもらえた感じでしょうか?

前田:僕らは僕らの代で、もちろん甲子園に行こうと頑張ってましたけど、それが叶いませんでした。だから彼らが甲子園に出場している時点で、僕らよりも結果を出しているので、もうそれだけで“凄ぇな”っていうのが大前提としてありますね。で、そのなかで、あの極限の場面でああいう結果を出してるっていうことは、その裏付けとしてたくさん練習してないとやっぱり無理なんですよ。

高岸:はっきり言って僕があの場面で打席に立っていたら、跳ね返してないなって。後輩たちにも勉強させられた試合ですね。だから試合終了後の校歌で“「やれば出来る」は魔法の合いことば”の合唱がまた余計に心に染みたというか。

前田:あの場面でホームランを打てる確率だけでいったら、もう天文学的な数字なんですよ。そういうのを考えると、確率で物事は計れるものじゃないなっていうことを改めて野球が教えてくれた感じですよね。

――僕は見てて、また名勝負で星稜は悲劇の負け役になったなって。延長戦でいったらあの箕島(和歌山)との延長18回(79年第61回大会3回戦)があって、松井秀喜の5打席連続敬遠があって。で、この済美戦です。いつも星稜って名勝負で不思議と負ける側なんですよね。

高岸:その星稜が去年の夏の101回大会では智弁和歌山(和歌山)とやって延長戦で今度はサヨナラホームランで勝ったんですよ。サヨナラホームランで負けた星稜が次の年にはサヨナラホームランで勝つっていうのも不思議な巡り合わせですよね。

前田:しかも、その2試合とも奥川投手が投げていて……因果を感じますね。星稜のバッターだって、打とうと思って打てるもんじゃないですからね。

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