夏の甲子園 「ティモンディ」が今も忘れない名勝負 2018年「済美VS星稜」
「延長だから!」っていうような戦い方はするな
――こうして試合は9-9の同点で延長戦に突入するんですが、甲子園の延長戦って特にドキドキしませんか? あの試合、済美は後攻でしたが、先攻のチームの立場で考えると、無得点で終わってのその裏の守りってなると、ちょっとイヤなのかなと。
前田:僕らは高校時代に、本当に1回から延長戦まで気持ちは一緒というか。変えちゃいけないというか。「延長だから!」っていうような戦い方はするなって、ずっと教えられてきたんですよ。
高岸:だから1回から9回まで同じクオリティで戦い続けられるだけの気持ちの余裕を含めて、身体を作っていました。ただ、疲れてくるとやっぱり気持ちの余裕もなくなるので、大事なところで力んだりするので、そこは気をつけないといけないって。
前田:これは多分なんですが、選手たちはもうあまりそんなに意識せず、ずっと同じ気持ちでやっているんだろうなとは思いました。ですけど、見ている側としてはやっぱりハラハラしてましたね。逆に高校生当時の僕たちが、じゃあ同じ精神状態でプレーできていたかと聞かれたら、自信持って言い切れないです。
高岸:今思うと、ここで負けても終わりじゃないし、この経験が今後の人生に繋がっていくっていうのが分かるんですが、やっぱりプレーしている本人は、ここで負けたら全部が終わりだ、ぐらいの気持ちでやってますから。そのなかでのこの緊張感だったりっていうのはたまらないですね、やっぱり観ているほうとしては。
――延長戦に入った試合はそのまま動かずに、同点で13回に突入します。そして春夏の甲子園を通じて史上2度目となるタイブレーク制が適用されました。このタイブレークについてはどう思われます?
前田:今までの流れとはまったく違う環境に急に置かれますからね、選手は大変だと思いますよ。
――実は済美は12回裏に1死満塁という絶好のサヨナラのチャンスを逃していて、嫌な流れになっている状態でのタイブレークでした。結果的に2点勝ち越されましたが、観ている側としては、よく2点ですんだなと。
高岸:でも、選手からすると2点でもやっぱりイヤですね。これで追いかけるという状況になったワケですから。
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