夏の甲子園 「ティモンディ」が今も忘れない名勝負 2018年「済美VS星稜」

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逆転勝ちが多い済美

――これは高校時代に投手だった高岸さんにお伺いします。7-1と6点もリードがあるなかで、あの8回裏の場面なんですが、あれだけ点差があったのに突然猛攻を食らって、みるみる詰め寄られるっていうのは、星稜の投手の立場になって考えると心理的にはどうなんでしょうか?

高岸:大差がついていたときは、いつもの精神状態というか。決して油断ではないですけれども、余裕があったとは思いますね。

――ただ、あの8回裏はまさかの連打連打で……。

高岸:星稜側からすれば、突然の出来事だったんじゃないかと。どうしても一端余裕を持って力を抜いている状態ですから、そこからまた緊張感持って……っていうのは非常に難しいと思います。そういう心の部分が、プレーにも無意識でも繋がっていったんじゃないでしょうか。特に高校生だと露骨に出やすいかもしれない。

 ヒットでつながれて、またつながれて、気づいたら7-6の1点差になった段階でもう精神的に余裕がなくなって、そこで最後の締めくくりじゃないですけど、9番の政吉(完哉)選手に逆転3ランをレフトスタンドに叩き込まれた感じですよね。

――伝統的に済美って打つチームというイメージがあるのですが、あの回の攻撃はまさにそれでした。

前田:これは済美の伝統だと思うんですが、練習試合も含めて、もう9回ずっと負けていても……っていう精神状態でやっているんですよ。我々のときでもそうでしたし。

高岸:逆境を跳ね返すための練習量の多さですよね。そこで諦めない心や精神を日頃から訓練していたので。監督は我々の時代の上甲(正典)監督から今の中矢監督に替わりましたが、上甲野球も中矢野球も最後まで諦めないっていう部分は変わっていないですよ。上甲監督は「風は絶対に待っていたら来るから」っていうことを、もう口癖のようにおっしゃっていたので。

前田:だからなのか、済美って実は逆転勝ちが多いんですよ。上甲監督時代から凄く多いんです。公式戦だけでなく、練習試合でも不思議なことにやたら多かった。

――ただ、星稜もさすが強豪校でした。普通なら大逆転されて気落ちするところなのに、9回表に追いつきました。これで9-9の同点です。

前田:土壇場でのあの脅威の粘りには驚かされました。でも、逆にそこで同点で押しとどめて、勝ち越させなかったのも済美の強さといいますか。

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