南シナ海で“米中衝突”の危険性 日本政府が今すぐやるべきことは?

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「新たな時代に向けて強靭性を持った社会構造を構築する」

 7月30日の未来投資会議の会合に出席した安倍首相はこのように発言した。

 新型コロナウイルスのパンデミックの教訓を踏まえ、デジタル化を通じた東京一極集中の是正やテレワークをさらに進めるための課題解決、働き方の見直し、生産拠点の分散など新たな産業構造の構築などが論点である。年末までに中間報告がなされる予定である。

 歴史を振り返ると、感染症の流行は社会にしばしば大きなインパクトを与えてきた。

 14世紀のペストの感染爆発により、封建制度の基盤である荘園制度が解体した欧州では、19世紀に入るとコレラの感染爆発で上下水道の整備など都市インフラが整備され、その後の結核の感染爆発で原因とされる劣悪な労働環境が改善された。

 未来投資会議の論点からわかるように、ポスト・コロナ社会のキーワードは「分散」である。近代化以降、進んだのは「都市化」と「グローバル化」であるが、この流れをITなどの技術を活用することで適正化しようとするものだ。

 感染症の流行は社会に大きな影響を与える場合がある一方で、社会がまったく変わらなかったことも多い。14世紀のペストの感染爆発で欧州では、「人間不信」を招くような惨劇も生じたが、非常事態が終わると、人々は元の日常生活を過ごすようになり、家族や隣人との関係に変化が生ずることはなかった。

 人々が無意識に行っている日常的な行動や思考は簡単には変わらないのである。

 詩人ポール・ヴァレリーはかつて「我々は後ずさりしながら未来に入っていく」と述べたが、日本史における大改革も、未来への飛躍ではなく、古来の伝統への回帰だったことに気づかされる(明治維新のモットーは7世紀に確立された天皇親政体制だった)。

 私たちは過去や歴史を参照しながら未来を形作るのである。

 今回のコロナ禍で日本が変わるとすれば、伝統を外れて一方的に行き過ぎた部分を是正する動きではないだろうか。

 まず「都市化」だが、コロナ禍は経済の東京一極集中見直しの契機となるのだろうか。

 総務省の人口移動報告によれば、今年5月の東京都は転出が転入を上回る「転出超過」となり東京一極集中の緩和につながるかと注目されたが、翌6月は再び「転入超過」に戻ってしまった。

 日本では江戸時代から衛生状態が悪いにもかかわらず都市化が進んだという「伝統」がある。都市部には財や富があり、対面でしか得られない情報や人的ネットワークがあるという人々の思いが強いからである。リアルにつながった人々が議論し、行動すれば、より良い豊かな社会を実現できるという志向性は一朝一夕には変わるものではない。

 米国では新型コロナの感染を回避するため、郊外への移住が進んでいるようだが、日本では今後もマスクをしながら都市部で生活するというスタイルに変わりはないのではないだろうか。

 筆者が今後大きく変わると考えているのは「グローバル化」の方である。

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