神戸山口組、山健組の内紛・分裂のワケ…5年前に銃撃された元ヤクザが明かす

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しばらくはガムテープで塞ぎ、警察はアメ車で警備

「山健にあらずんば山口組にあらず」と呼ばれた時代がかつてあった。5年前の夏、6代目山口組を割って神戸山口組を結成した中核組織は山健組である。その後、ジリジリと勢力を削られ、いよいよ山健組は、神戸山口組のトップである井上邦雄組長派と反井上派の2つに分裂状態となった。同じくちょうど5年前の夏、元6代目山口組初代古川組舎弟頭補佐で、その後にカタギとなってNPO法人として活動中の竹垣悟氏(69)の自宅玄関に銃弾が撃ち込まれる事件が起こった。山健組執行部の1人が企てた犯行だったが、竹垣氏は「今日の山健組の衰退はあのときから始まっていた」と明かすのだった。

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「当時の山健組執行部の1人が、私の娘に向かって“竹垣はカタギになってNPO法人を立ち上げ、ヤクザを批判しとる。竹垣はポン中(覚せい剤中毒)や”と言いましてね。私もそれを聞いて“来るなら来い”と挑発したんですわ。そしたら、ウチの家の玄関に向けて5発の銃弾がハジかれたのです」

 と話すのは竹垣悟氏。ちょうど5年前の8月13日のことだった。

「お盆の最中で玄関を修理しようにも業者が休んでて、しばらくはガムテープで塞いで凌ぎましたよ。警察も、“どこから手配してきたんか”と思うくらいの頑強なアメ車でやってきて、1カ月くらい夜間だけやったけど張り込んで警備してくれました」

 駆け足で彼の経歴を紹介しておくと、兵庫県姫路市出身で、東映東京撮影所の大部屋時代に端役として映画に数本出演したり、若山富三郎の付き人を経験したりした後に、竹中正久組長率いる竹中組の直系下部組織に身を置いた。

 正久4代目が射殺された、血で血を洗う山一抗争を経て、竹中組当代となっていた竹中武(4代目の実弟)組長が山口組を脱退する1989年、竹垣は中野会に移籍。中野太郎会長は、5代目山口組若頭補佐の重鎮である。97年に起きた宅見勝・5代目山口組若頭射殺事件を機に、竹垣氏は古川組へ移籍。稀代の漫才師・横山やすしの晩年に兄弟の盃を交わしスポンサーとして交流した。2005年にカタギとなり、現在は暴力団員の更生を支援するNPO法人「五仁會」を故郷の姫路で営んでいる。

分裂後のメディア出演で鮮やかな“カエシ”を実現

「ウチのNPO法人は自宅と同じところにありまして、子供や孫もおります。“ムチャしよるなぁ”というのが私の偽らざる心境でした。また、その銃撃事件について6代目山口組の間では、“カタギの家に撃ち込むなんてもってのほかや”と言われていたと聞いています」

 ヤクザは義理と人情、そしてメンツを重んじる世界である。やられたら報復する(=カエシ)。もっとも足を洗った竹垣氏が“カエシ”として実力行為に訴え出るわけにはいかない。

「そうこうしているうちに、8月の末に6代目山口組が分裂して神戸山口組が出来ました。それで私にもメディアから出演依頼が来まして、それ以降は一貫して神戸山口組やその中核組織である山健組を批判してきました。こういう形で“カエシ”が実現するとは思いもよりませんでしたが……」

「ヤクザというのは男を張る稼業です。6代目山口組を実質的に取り仕切るナンバー2の高山清司若頭が収監中の時期に、分裂騒動という名のクーデターを起こしたのは男らしくないですよ。そもそも、組織に生きるものとしてクーデターはやってはいけないこと。後ろに控える者たちはその背中を見ていますからね」

「筋道や掟を外したらヤクザやのうて愚連隊。盃を受けた親分が気に入らないならカタギになれということです。山健執行部の男がカタギであるウチの玄関をハジいたのと、その山健を中核組織とする神戸山口組が6代目を割って出たこと。これはヤクザとしてはあるまじきことやと思います。その意味で、今日の山健の衰退は始まっていたと言えるのかもしれませんね」

「その点、一和会の者たちは当時の山口組の盃飲んでなかったぶん、一分の理がある。ヤクザとして抗争をするスジが通っているわけです。山口組を出た以上、名前も全く関係のないものを名乗ったりするなら別ですが、そもそも暴力団への風当たりがハンパないこのご時世に神戸山口組と言っても世間の理解はまるで得られません」

生活保護を受ける元山口組直参クラスもいる時代…

 竹垣氏の話にあった「クーデターはやってはいけないこと」「後ろに控える者たちはその背中を見ている」というのを地で行く事態が起こったのは2017年4月。神戸山口組が割れて、任侠団体山口組(織田絆誠代表、現・絆曾)が結成されたのだった。

「織田代表は当時の会見で、神戸山口組の井上邦雄組長に対し、口で言うのも憚られるほどの批判を展開していましたね。結局その直後、織田代表のボディガードが神戸山口組内山健組傘下団体の組員に射殺されました。仮に神戸が銃口を向けるのであれば、それは6代目の方ではないのかと思いましたけれどね。すでに対抗する力がなかったのかもしれません」

 2019年10月に高山若頭が出所後、堰を切ったように全国で抗争が激化するものの、6代目側は力で圧倒してきた。

「ひとことで言えば、井上組長の指導力、決断力を高山若頭の存在が上回ったということになるでしょうか。井上組長は周囲から引退を勧められても拒否しているようですね。昔は山口組を引退すると1億円とか功労金という名の退職金が出たんですけどね。でも、その後に”ナゾの強盗”が入ったり、カタギになった途端にカネをせびられたりするのもしょっちゅうで。ほとんどのヤクザの親分は引退後に惨めになっていきます」

「井上組長クラスになれば各方面にカネを貸しているはずですが、カタギになれば脅しが効かないのでそれが回収できなくなる。ヤクザやってた時は元気やったのにみんな落ち目になって行くのを井上組長も見てきたから、それがイヤなんでしょう。山口組の直参クラスで名の売れた幹部であっても、生活保護を受けている者がいる、そんな時代なんですよ」

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週刊新潮WEB取材班

2020年8月11日掲載

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