夏の甲子園「上田まりえ」が今も忘れない名勝負 2004年「済美VS中京大中京」
試合をMDに録音
――録画録音していたんですか?
上田:はい、テレビとラジオ両方録音していました。当時はまだビデオでしたから、ビデオテープとあとはMDですね。それぞれに録画録音して、で、それを再生しながら。ときにはテレビの実況と解説の方のコメントを全部ノートに書いて……みたいなこともやってましたし。
――受験勉強中に、このときの実況を聞いて、ご自身を奮い立たせていたっていう話を聞いたことがあります。
上田:受験勉強だけではなく、センター試験をはじめ入試本番のときもですね。この試合と、ほかに何試合かお気に入りの試合のMDを連れて行ってました(笑)。
でも特にこの試合は、甘井選手がすぐホームランを打つので、「甘井、先頭バッターホームラーン!」という実況を聞いて、ヨシ!っていう気持ちを作ってから試験に臨んでいました。
「うわっ! あの小椋だ!!」
――ちなみにこれは夏の甲子園ではないんですが、上田さんの母校・米子東が甲子園に出場しました。19年の春の選抜大会でした。
上田:そうなんですよ。でも、その前年秋の明治神宮大会王者の札幌大谷(北海道)といきなり激突することになって、1対4で負けてしまいました。
とはいえ、そのチャンピオン相手に後輩たちはすごくいい試合を見せてくれました。普段、私が野球観戦するときは、ピッチャーのボールが見える位置、バックネット裏に座るんですが、このとき初めてアルプススタンドに座って。ああ、アルプスに座るっていうのは、こんな気分になるんだなって。景色がちょっと違いましたね。
――ちなみにこのときの米子東のエース左腕だった森下祐樹投手に関するエピソードがあるんですよね?
上田:これが不思議な縁があるんです! 森下投手はこの春、慶應義塾大学の野球部に入りました。実は今、私の夫がその野球部の助監督をしているんです(編集部註:竹内大助氏)。しかも、主にピッチャーを見ているので、まさかの森下投手を指導しているっていう。
さらに、夫の出身高校が中京大中京なんです。だから先の小椋投手も、その縁でたまたま1回、同校のグラウンドでお会いしたことがありまして……。そのときは思わず、「うわっ! あの小椋、小椋だ!!」って、一人思わず興奮してしまいました(笑)。
“掛け値なし”は高校野球だけ
――あの済美対中京大中京戦がまさかこんな形で繋がるなんて!?
上田:それもこれも、やっぱり甘井選手なんですよ。現在、私はタレントとして活動していて、その中には幸運なことに野球に関わる仕事や球界の方と関わる仕事もあるんですね。そう考えると、甘井選手が活躍したあの試合は、まさに今の私の原点になっていると思います。
――最後に、上田さんにとっての高校野球、甲子園の魅力を教えてください。
上田:年齢を重ねていく中で強く感じるのですが、大人になると一つのことに夢中になることって難しいじゃないですか。夢中になったとしても、どこかこう第三者的と言いますか、自分を俯瞰で見る、そしてちょっと冷静に判断する場面もなかったりしないといけないみたいなところもあると思うんです。
でも、高校球児って多分、本当に真っすぐなんですよね。だからみんな集中して1球1球必死に追いかけて……っていうような。何かそれがやっぱりすごくいいなと。
それは何か大人にはできないことっていうか。高校野球のほかにも大学野球、社会人野球、プロ野球ってあって、それぞれに違う素晴らしさがあるんですが、でもその中で一番“掛け値なし”っていう言葉が当てはまるのは高校野球なんじゃないかなって。そこがすごく魅力的だなって思っています。
週刊新潮WEB取材班編集
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