病身「池江璃花子」を酷使する「電通」「なべおさみ」

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 仮に本人が望んだとしても、周囲はもう少し、気を使うべきではなかろうか。病み上がりでありながら、池江璃花子(20)の露出は増える一方。もちろんその裏には大人の思惑があるから、期待よりまず不安が募ってしまうのである。

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「池江さん、いろいろなもの背負わされちゃっているな。気の毒だな、と思いました」

 とは、『街場の五輪論』の共著がある、コラムニスト・小田嶋隆氏の弁である。

 来年の東京五輪開幕「予定日」をちょうど1年後に控えた、この7月23日夜、組織委員会が開催した「記念イベント」。そもそも開催の可否はまったく未知数なのだが、ここに登場したのが池江である。

〈1年後の今日、この場所で、希望の光が輝いていてほしいと思います〉

 新国立競技場で聖火がともされたランタンを掲げ、カメラに向かって毅然とした表情で述べた姿は、ニュースなどで何度も流されたから、目にし、心を揺さぶられた方も少なくなかったはずだ。

アスリートファースト?

 が、ちょっと待て。

 むろん池江の発信力は強く、そのパフォーマンスは素晴らしかったが、周囲は、これを「美談」で終わらせてよいのだろうか。

 池江の病状を整理すれば、白血病の公表から1年半。抗がん剤治療などを続け、造血幹細胞移植も受けて昨年12月に退院した。体力も免疫力も、まだまだ元に戻っていないであろうし、ましてやコロナ禍だ。少しでも心身の疲労を減らすべき、というのは医者でなくてもわかりそうなものだ。

「オファーを受け、本人も強く希望しての参加だったとのことですが……」

 とは、さるスポーツ紙の五輪担当デスク。

「もっとも、気が進まなかったり、身体がきつかったりしても断りづらい状況にはあったでしょうね」

 この記念イベントのクリエイティブディレクターを務め、池江へのオファーを決めたのは、佐々木宏氏。ソフトバンクの「白戸家」のCMで知られる佐々木氏は、五輪にも深く関わり、リオ五輪閉会式で安倍首相にマリオの扮装をさせた。東京大会ではパラリンピック開閉会式の企画演出を担当している。そして、

「今回の五輪も組織委員会の中核に電通がいるのは周知の事実ですが、彼も電通の社員。そして、池江のマネージメント会社も、電通のグループ会社なんです」(同)

 なるほど、それでは無下にはできまい。

「佐々木さんは“池江しか頭になかった”と言っています。来年の五輪開催については、世論調査をすると再延期や中止すべしとの声が6割以上を占める。組織委員会は、池江の起用でその空気を挽回しようと目論んだのでしょう」(同)

 他方の池江にとっても、あの“怪芸人”の影が消えない。吉本興業の関係者によれば、

「彼は“璃花子にはなるべく多くの皆さんに頑張っている姿を見せなさい、そうしないとスポンサーが離れてしまうからね、と言っているんだ”と周囲に常々語っています」

 オカルト療法・なべおさみの話を忠実に守っているとしたら、悲劇ではないか。

 前出・小田嶋氏が言う。

「彼女が背負っているストーリーと、開催危機にあるオリンピックというストーリーとがシンクロする。それをうまく使われてしまった感があります。本当は別物なのにね。彼らにとって、アスリートも一枚のカード、将棋の駒なんでしょう。池江さんは更に大きなプレッシャーを背負わされることになったと思いますよ」

『オリンピックの終わりの始まり』の著書がある、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏も手厳しい。

「彼女を使うなんて非常識も甚だしい。『アスリートファースト』なんて欺瞞であることがよくわかりますよ。五輪を開催しないと損失を被る人がいて、彼女の善意を利用しているんでしょ」

 が、その動きは止まらず、今度は聖火ランナーに起用するとの報道も。最終点火者に、との声もあるとか。

 練習を再開し、パリ五輪を目指す池江。今が肝心の時だから、そこに集中させてあげるのが筋。大人の都合で彼女の努力を「水の泡」にすることなかれ。

週刊新潮 2020年8月6日号掲載

ワイド特集「不条理劇の舞台裏」より

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