徴用工問題…「日本に賠償金を求めるのはスジ違い」韓国の当事者インタビュー
3億ドルを流用した韓国政府の不実を問う
韓国の最高裁が日本製鉄(旧新日鉄鋳金)に賠償を命じた韓国人元徴用工訴訟で、韓国内にある日本企業の資産差し押さえが決定し、同国にある日本製鉄の資産を現金化できるようになった。韓国国内の世論がこれを後押しするものばかりかと言うと、さにあらず。実は、元徴用工への賠償を日本ではなく韓国政府に求めた団体がある。その理事長へのインタビューを通じ、1965年に定められた条約の中身を韓国が一方的に反故にしたことから始まる日韓関係の悲劇について指摘する。
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目下、この件に関して文在寅政権は「司法判断を尊重し、政府が判断することはない」 と明確な答えを避けている。確かなことは日韓両国の関係は戦後最悪の状態に陥るということだ。
元徴用工への賠償問題について、日韓政府が話し合いで解決してくれると期待してきた人物がいる。日帝強制徴用被害者および遺族39団体を束ねる、李ジュソン理事長だ。その名の通り、強制徴用、戦災者遺族たちを代表する彼は2009年、韓国政府に対し、元徴用工への補償を求め立ち上がった人物である。
1965年の「日韓請求権協定」で韓国政府は日本政府から無償3億ドル、有償2億ドルを受領した。このうち3億ドルはもともと被害者の家族に支給するものであったが、韓国政府は勝手にこれを国家発展の資金に流用。「漢江の奇跡」など高度経済発展の原資となったわけだが、そういった事実を踏まえ、韓国政府にこそ賠償責任があると李理事長は考えているのだ。
さらに、強制徴用、戦災者遺族を代表しない「外部団体」が李理事長の推進する活動に介入、事実上妨害をし、利得を得たとも主張している。
日本政府および企業へ損害賠償を請求することは現実的ではないという立場の李理事長は、このまま日韓が報復の応酬に陥り、両国の関係に悪影響を与え続けることを深く憂慮している。以下、当人との一問一答である。
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