今年の巨人の戦い方で思い出す「川上哲治監督」の言葉【柴田勲のセブンアイズ】
巨人が7月31日からの広島戦(東京ドーム)の3タテを逃した。3連戦の最後の8月2日、先発・桜井俊貴が3回途中5失点でKOされ、序盤から主導権を握られた。終わってみれば大差負け、対広島2カード連続の3タテはならなかった。
川上(哲治)さんが1シーズンに臨んでよくこんなことを話していた。
「序盤から打線が点を取って投手陣が抑える。なにもしなくても勝てる。これが3分の1ある」かと思えば、「先発が打ち込まれて早々と大量リードを許す。手の打ちようがない。作戦もへったくれもない。これも3分の1ある」、そして「あとの3分の1をどう戦うか、うまく戦ったチームが優勝する」。
2日のゲームは「手の打ちようがない」という部類で、後から出てきた中継ぎ陣も広島の勢いを抑えることができなかった。巨人は36試合を消化して貯金は10(3日現在)で、首位をキープしている。川上さんの言葉はどこのチームにも言えることだが、いまの巨人は「どう戦うか」という肝心のところをモノにしている。
投手陣の柱である菅野智之が今季はまさにエースの役割を果たしている。彼で3連戦の頭を取ればチームが乗っていける。一番嫌なのは連敗である。3連敗の心配がないのは意外と大きいのだ。
坂本勇人、丸佳浩から4番・岡本和真につながる打線は強力だ。ことに岡本が開幕から主砲としての役割を果たしている。打点は37でトップのヤクルト・村上宗隆とは1打点差だ。
それにしても岡本の打撃の充実ぶりは著しい。このままいくと40本塁打、100打点も視野に入るのではないか。甘い球を見逃さなくなってきた。相手投手は長打を浴びるのを警戒して、微妙なところを突く。そんなボールには手を出さず、じっくりと見極めればいい。苦しくなれば、どうしても球は甘くなるものだ。
昭和の時代、王(貞治)さんはボール球には手を出さなかった。18年連続で最多四球をマークしているが、同時期に13年連続を含む15回本塁打王になっている。どっしりと構え、ボール球には見向きもせずに好球を待つ。この姿勢を続けることが大事だと思う。
大城卓三の打撃も向上しているし、なによりも増田大輝、北村拓己、重信慎之介、さらに松原聖弥、岸田行倫といった若手を適材適所で積極的に起用。チームを活性化させている。
楽天とのトレードで加入した左腕の高梨雄平も中継ぎ陣を底上げした。それにここにきてゼラス・ウィーラーが存在感を強く見せ始めた。打撃はもちろんのこと、左翼に加え、一、二塁、楽天時代は三塁を守った実績がある。守備は球際に強い。全力疾走を怠らないし、走塁も基本に忠実だ。
いまはチームが替わって新鮮な気持ちであり、ゲームに出るのが楽しいのだろう。明るい性格のようで、ベンチでも盛り上げ役となっている。
原辰徳監督は抜け目なくいろいろ試している。2日、ヘラルド・パーラを1番で起用した。坂本、丸、岡本がしっかりしているので1番をどうするかが開幕からの課題だ。残念ながら、この試合ではうまく機能しなかったが、メジャー時代は結構1番で使われている実績がある。相手投手の右左はあるが、パーラの1番は悪くないと思う。
選球眼がいいし足だってある。大振りするタイプではないから、確実に出塁を狙える。でも原監督にすれば1番の譲れない理想形があるのだろう。これまで亀井善行、吉川尚輝、北村、重信、増田大、湯浅大とこのパーラを含めて7人起用してきた。今後も試行錯誤は続くのだろう。
いずれにせよ、肝心なのは川上さんが言うところの「あとの3分の1をどう戦うか。うまく戦ったチームが優勝する」を実践することだ。その点、原監督は選手起用・采配で冴えている。
まだ独走とは言えないものの、近いうちに現実になるかもしれない。
さて、プロ野球界で一番恐れていたことが起こった。ソフトバンクの長谷川勇也外野手が新型コロナウイルスに感染していたことが明らかになった。
ファームにいて、1軍選手、首脳陣らと濃厚接触はないものの、若手らがファームの施設内の寮で生活しており、そこからペイペイドームに通い、1日までの西武戦でベンチ入りしていた選手がいたという。
念には念を入れて2日の西武戦は中止となった。感染経路は不明だというが、これが新型コロナの怖いところだ。東京でも200~400人の感染者が出ているけど、実際にはその何十倍もの感染者がいるのではないかとも言われているそうだ。
また、3日にはチームスタッフに陽性判定が出たことがわかった。とにかく気をつけるしかないが、長谷川のように感染経路不明と聞くとやはり怖くなってくる。長谷川には一日でも早く復帰してほしいし、プロ野球がこのまま試合を消化できるように願っている。