中国「三峡ダム」決壊危機、日本に責任転嫁!? 武漢が被災で“バイオハザード”懸念も
「中国人は見抜いていた」
評論家の石平氏が言う。
「洪水を防ぐためのダムが今や洪水の元凶となりつつあるのは皮肉ですが、ダムの下流にある上海や南京、武漢などは金融や製造業の中心都市。そこでは中国人だけでなく、町を拠点とする日本企業やその駐在員もまた、被害を受けることになるのです」
まさしくその通りで、中国が世界に誇る巨大ダムの決壊は、我が国にとって決してひとごとではない。というのも先の譚氏は、
「ダムが決壊することになれば、中国政府は“原因は日本企業にある”と言い出しかねません」
そう警鐘を鳴らすのだ。かつて2000年、三峡ダム建設プロジェクトの2期工事で、三井物産を通じて住友金属(現・日本製鉄)が水圧鉄管用の鋼板を4600トン受注した。が、品質検査の結果、衝撃に対する強度が基準を満たしておらず、一部が不合格に。両社の関係者も出席して日中間の交渉が行われ、最終的には日本側が陳謝、住友金属が代替品を納入して解決に至ったのだが、
「この経緯は当時、中国の官製メディアが発行する雑誌で報じられました。ところがその後、17年に日本で神戸製鋼の(アルミなど)品質データの改ざん事件が発覚した際に、『日本製造業の不正を17年前に中国人は見抜いていた』などと、住金の三峡ダムの一件を蒸し返すような形で再び中国メディアが記事にし、以降はネット上で広まっていったのです」(同)
そうした記事は各所に転載され、今回の水害が本格化する前まで、ニュースサイトなどで閲覧可能だったというのだ。
「7月12日、習近平国家主席は水害対策と災害救助に全力を挙げるよう『重要指示』を出しました。これを境に、ネット空間をコントロールする中国政府は情報を一本化しようと“雑音”である書き込みを削除し、情報発信も制限しています。万が一、実際に決壊となったら、政府はあの情報を再び拡散させて日本企業に責任転嫁するおそれは大いにあります」(同)
そもそも事業主は中国政府で、住金は代替品を納入して工事は無事、継続されており何の問題もない。さらに同社は03年、三峡ダムの3期工事に際しても鋼板を連続受注した実績がある。これで中国が矛先を向けるようなことがあれば、筋違いも甚だしい。
元新潟大教授で『三峡ダムと日本』の著作がある鷲見一夫弁護士が言う。
「中国共産党は、近代的技術力を示すために世界一のダムを造ったわけです。それが壊れるなんてもってのほか。だから、いったん不安を煽るような過去のニュースを削除したのでしょう。ですが、いざ決壊したら事実は隠し通せません。国の威信をかけて造ったものが壊れても国民に頭は下げられない。そこで日本に矛先を向けるのです。中国国民も直接には政府を批判できないものだから、日本を責めるしかありません」
そうした不穏な動きについて日本製鉄に尋ねると、
「仮定の話については、コメントを差し控えます」
としつつも、
「三峡ダム向けの鋼材については、お客様に納得頂いて納品したものと理解しております」
理不尽な物言いは、それこそ鋼板で跳ね返せばいいのだ。
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