京都ALS嘱託殺人が過去の事件と“まるで別物”と批判される理由
「ホスピスもやります」の矛盾
ホスピス(終末期医療)として多くの末期患者を看取ってきた淀川キリスト教病院の柏木哲夫前理事長は「ALSの患者さんも診てきましたが、肉体的にも精神的にも辛くて生きられないと訴える患者さんにどう対応するか、スタッフらみんなで生きてもらおうと考えるのが基本姿勢です」とする。大久保容疑者は終末医療に強い関心を持っていた。しかし柏木氏は「ホスピスは安楽死を認めていません。今回の医師の一人が自分の施設で『ホスピスもやります』としているのは驚きです。殺害までのプロセスが軽すぎ、ひいては命も軽んじている。理論的な筋道も立てずに簡単に安楽死をやっている。苦しむ患者さんにはチームを組んで当たることが一番です。医師にはできなくても患者がチームの宗教家と会話して生きる希望を持った人もいる。京都の事件はそんな努力すべてをすっ飛ばしており、憤りを禁じえません」と話す。
「医師として一体どんな哲学を持っているのか」と疑問を抱く久保容疑者だが妻の三代さん(43)は一期だが自民党の元衆院議員である。名取市で取材陣に「事実なら言語道断。安楽死の法制化は国会で審議すべきで臨床の現場で決めるものではない」などと元国会議員らしく話し「ご遺族の皆さんに申し訳ない」と謝罪した。だが夫について「よく県外に短期間、医療行為をしに行っていた」と語っていたことからすると他にも同様の余罪があった可能性もある。(ちなみに三代さんは自らのブログで夫を「てめえ」などと口汚く罵り、早々と離婚を表明しているようだ)。
林優里さんは手足が不自由でも「視線入力」という特殊な作法でパソコンを駆使できた。それは素晴らしいが、主治医もあずかり知らぬところで遠来の医師に我が身を抹殺させることまでできる時代であることには改めて不気味さを覚える。
[4/4ページ]