韓国はキャッシュレス超大国と胸を張るけれど…おひざ元の通信網は脆弱で
接待交際費も企業カードでの支払いのみが税制上の経費として認められる
現金取引は販売者の申告に頼る以外に事業者の売上げを知る方法はない。一方、取引内容が記録に残るカード決済は、売上を把握できる。そしてカードの決済情報は国税庁に提出され、控除や課税の基礎データとして使われている。
市中の商店は現金払いとカード払いで値段が異なる「一物二価」が少なくない。というのも、現金取引は脱税できるが、カード払いは課税を逃れられないため、税金分を上乗せしているのである。
また企業の接待交際費も企業カードでの支払いのみが税制上の経費として認められるが、これも飲食店の脱税を防ぐための制度である。
政府は消費拡大と税収確保に続いてコインレス化にも着手した。金属の価格変動で製造原価が貨幣価値を上回ることがあるからだ。まずはソウル市が2004年に非接触型の交通カードを導入した。当初は首都圏の地下鉄やバスのみだったが、タクシーや一部のコンビニエンスストアの支払いでも利用できるようになり、地方都市や高速道路にも利用範囲が拡がった。
それにともなって、交通カードの利用を促すインセンティブも導入した。首都圏の地下鉄やバスは100ウォン引で利用でき、乗継割引は交通カード利用時のみ適用される。
市民はもちろん、出張などで頻繁に韓国を訪問する人も交通カードを使っており、交通カードを持っていないのは韓国を再訪問する意思がない旅行者くらいしかいない。
韓国の最高額紙幣は2009年に誕生した5万ウォン札(約4400円)で、それまでの最高額紙幣は1万ウォン札(約880円)だった。テレビや冷蔵庫といった高額品の現金購入は札束を持ち歩く必要があった。高額紙幣を作らない理由も税収確保が容易なキャッシュレスに誘導するためだろう。
なお、韓国名物のぼったくりタクシーなど、非正規業者や非正規取引でキャッシュレスで支払いが行われることはほとんどない。キャッシュレスの取引記録は国税庁に提出されるため、ぼったくりがバレバレになるからだ。
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