まだある「中川親方」パワハラ 弟子に差別発言、コロナ禍“ちゃんこ会”問題も
日馬富士は引退
当然、相撲協会のお歴々は今回のパワハラ騒動に頭を抱えているのだが、それ以前にこんな悩みも……。
元々、告発の舞台となったコンプライアンス委員会は、17年に元横綱日馬富士が貴乃花部屋の貴ノ岩を殴打した事件がきっかけで作られた。時勢の流れで相撲界といえども、かねて問題になっていた暴力事件について、外部の法律家なども含めた委員会が必要だという議論になったからだ。
「しかし、この委員会ができて以降、力士からの相談が殺到していると聞いています」
とは、前出の相撲担当記者である。
「当時、日馬富士の一件は大々的に報道されましたからね。身に覚えのある力士は多く、また、自己防衛のためパワハラされた際に録音する力士も多くなりました。そうした通報が多数寄せられるようになったことに、協会幹部は当惑していたのです。というのも、相撲は体をぶつけあう、いわば格闘技ですから、厳しい稽古は付き物。正直、相談するまでもないような、真っ当な指導に対する通報内容があったことも事実です」
そうはいっても、その幹部たちもまた、脛に疵(きず)を抱えていて、
「角界には江戸時代から“番付が一枚違えば家来同然、一段違えば虫けら同然”という言葉があります。親方と弟子の差は天と地ほども違う。年配の親方衆はこの考えに則った精神で現役時代を過ごし、師匠になっても弟子を叩いて言うことを聞かせるのが当たり前。似た過去を誰しも持っているのです」(同)
だからなのか、中川親方の知人はこう漏らすのだ。
「今回の騒動で、中川親方は協会の親方衆に謝罪してまわっているそうです。昔から目上の力士や親方にはへこへこする性格でした。部屋の親方が度を越した暴行や異常な暴言を浴びせていたのならば、相撲界に残れる2階級降格なんて甘い処分はありえないと思います。実際、横綱の地位にあった日馬富士は引退を余儀なくされました。被害者が厳罰を望んでいないと、協会は喧伝するけれど、多少なりとも脛疵のある幹部たちに媚びを売っていたから軽く済んだ。そう疑われても仕方ないのではないでしょうか」
弟子を罵詈雑言で追い込むも、思わぬ“うっちゃり”を決められた中川親方に、実際のところを聞こうとするもなしの礫(つぶて)。代わって、日本相撲協会が、
「再発防止のための教育・指導を強化してまいります」
と言うのみ。
協会が掲げる「暴力決別宣言」とは裏腹に、根絶への“決まり手”は未だ見えず。角界での師匠と弟子の信頼という間合いは開いていくばかりなのだ。
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