クイックルワイパーが大活躍 プロにも絶賛された在宅介護での意外な使い道──在宅で妻を介護するということ(第5回)

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 どんなに大変な状況でも楽しみは見いだせるということだろうか。妻を在宅で介護しているフリーライターの平尾俊郎さんは、悪戦苦闘の中でも工夫や“発明”して、前向きに日々を過ごしている。68歳夫による62歳妻の在宅介護レポート、今回のテーマは自宅のヴァージョンアップ法である。

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【当時のわが家の状況】

 夫婦2人、賃貸マンションに暮らす。夫68歳、妻62歳(要介護5)。千葉県千葉市在住。子どもなし。夫は売れないフリーライターで、終日家にいることが多い。利用中の介護サービス/訪問診療(月1回)、訪問看護(週2回)、訪問リハビリ(週2回)、訪問入浴(週1回)。在宅介護を始めて1年半になる。

ベッドはいちばんいい部屋に置け

 訪問診療してくれる医師がようやく決まり、これで介護サービスの手配は完了した。最終的には、クルマで10分ほどのところにある介護事業所から医師・看護師・理学療法士が来てくれることになり、訪問入浴は目と鼻の先に新規事業者を見つけることができた。全部近場で手配できたことはラッキーだった。

 ケアマネさんによると、「このあたり(千葉市緑区、土気駅周辺)は介護関連事業者が多く、在宅介護には適した場所」らしい。あとは半月後に予定された女房の退院を待つだけとなり、ここへきてようやく私は具体的な迎え入れの準備を始めた。

 まずは、レンタルの「介護用ベッド」をどの部屋にどう置くかだ。要介護度が1・2で、食事や排泄が自分でできる人の場合は普通に寝室に置けばいいだろう。しかし、要介護5の女房の場合は基本寝たきりだから、ベッドのある場所が全生活の場となる。その部屋がリビングになり、トイレになり、もちろん快適な寝室であらねばならない。

 私は迷うことなく、リビングと襖で隔てた8畳間にベッドを置くことにした。この部屋は狭い3LDKのなかでいちばん広く、ベランダに面して日当たりも眺望もよい。下着やタオルなどを収納する箪笥もあり、押し入れもあるので何かと便利だ。襖を取っ払ってリビングと一体化させることで、食事中でもテレビを見ているときも、リビングからいつでも妻の様子をチェックできる。

 実は、ベッドを置くにはお誂えの6畳間が玄関脇にある。今は仕事部屋に使っているが、本棚やコピー機を他の部屋に移すことでちょっとした個室になる。

 一瞬、それもありかなと思ったが、それでは妻にとっては病院にいるときと変わらない。より窮屈な個室に隔離されたようなもので、彼女の目に映るものは無地の白い天井と丸い蛍光灯のみだ。これでは良くなる病気も悪くなってしまう。

 ベッドを置く場所に関しては前々から思うところがあった。それは、ふつうに寝室に置くのではなく、わが家で「いちばん気持ちのよい部屋」「私の目が届きやすいオープンな環境」に置くことだった。せっかく家に戻ったのだから「病室臭」があってはならない。自分で動くことはできないけれど、これまで続いてきた夫婦二人の生活の中に自然と溶け込むようなかたちで、介護の場を設けたかったのだ。

 この部屋の一番のウリは、見晴らしの良さにある。6階の部屋からは街の様子が俯瞰できた。

 ベッドの背を60度に起こせば、サッシ越しのベランダの向こうに調剤薬局の駐車場を行き交う人々、緩い坂道を上り下りする老若男女が見える。晴れた日には青い空を流れる白い雲。山を切り崩してつくった街だから緑も多く、メジロやムクドリが電線にとまり、さながら五線譜のように見えることもある。四方を白壁に囲まれた病院とは、目から入る情報量が段違いだ。萎縮し始めた脳味噌を刺激するにはもってこいの環境である。

 本当はテレビを見せたいのだが、リビングにほぼ固定されていて動かせない。ならばと、リビングのカーコンポの片方のスピーカーを本体から離してヘッドサイドに置き、四六時中、耳から音楽なり情報を注入することにした。

 病院にはBGMすら流れていなかった。多床室の場合はラジオを聞くにもイヤホンが原則で、それも消灯時間の9時まで。これでは病気と闘う気力も萎えてしまう。今は音楽療法もかねて、ミュージックステーションのINTER FM(89.7MHz)を一日中流している。

 女房優先にしたことで私の寝場所がなくなってしまった。結局、リビングのフローリングの床に直に布団を敷いて寝ることにした。お互いのいびきが聞こえる距離だ。これなら、就寝中に何か異変が起きても気づく可能性が高い。埃っぽいし冬場は少々寒いが、そこは我慢するほかない。1年365日、夫が夜勤でそばにいれば女房も安心だろうと思った。

 季節の変わり目など、明け方急に室温が下がることがある。そんなとき、隣に寝ていればすぐに気づく。エアコンで室温調整していなくても、自分の身体がセンサーとなって毛布1枚足したりできる。これはおすすめである。

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