「愛の不時着」大ヒットの立役者、脚本アドバイザー告白…私は北VIPのSPだった

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ヒョン・ビンに心奪われた人たち

――「愛の不時着」は日本でなぜ人気を得ていると思いますか。

 日本の視聴者がこのドラマにこれほどまで熱狂してくれるとは思いもしなかった。「軍事挑発」と「核の脅威」などで知られる北朝鮮内部の実情を、家族愛を中心に面白く解説したパク・ジウン氏の卓越した感覚が、日本の視聴者の心に響いたのだろう。

 北朝鮮の核問題など頭が痛い政治の話ではなく、DMZ(非武装地帯)という緊張の高まる空間を背景に隣人同士が集まり、話し合い、おいしいものを食べ合う姿。北東アジア特有の家族共同体への思いが通じたのだと感じている。

 日本側の視聴者は、残忍なアクション映画よりも叙情的で感動的なドラマに惹かれる傾向にあるようだが、それは「愛の不時着」のコードとぴったり合う。知られざる国、北朝鮮もまた同じ文化的同質性を持っていることを初めて知ったのではないか。

 また、韓流スターのヒョンビンとソン・イェジンが出演すると、作品の魅力がさらに倍増した。特に、主人公のヒョンビンが中年女性視聴者たちの心を捉えたと聞いている。

 クァク監督はドラマの台本だけを書き、演出と撮影は他の製作陣が行っている。クァク監督同様、脱北してきた一視聴者によると、北の実態と作品の中身とが若干ズレる面もあったという。以下、その関係者談である。

「例えば、人民班長の誕生日に村の住民がこぞって家の前に並び、賄賂を渡そうとするのは嘘ではないにしてもオーバーですね。また、コートや冬服の外に指導者の肖像画バッジをつけていたが、北朝鮮ではコートの外に肖像画バッジをつけることはありません」

「将校が礼服や軍服を着るときに必ず着用しなければならないマフラー(スカーフ)もなかったです。軍人は100パーセント髪を散髪(短髪に)していますが、ドラマの人たちは髪を伸ばしていました。北朝鮮の人々がこのような場面を見れば、事実と合わないって笑うかも……」。

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