マッチング男女の「ちょっと怖いけど大丈夫」…コロナ流行下で一時の快楽に
高校のクラスの男子20人のなかで11番目……なのに
未曾有の新型感染症の流行下でもマッチングアプリを介して出会いを重ねる男と女。この状況のなかで出会い、遊んでいるのはどのような人たちなのか。今回は“百発百中”と豪語する33歳の男性に取材し、その素顔をルポライターの安田峰俊氏が描き出した。
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前回、「コロナ禍のなかでもマッチングアプリで遊び続け、『東京カレンダー』の表紙を飾りそうな女子ばかりとベッドインしている男性(通称、隅田川のイチロー」)を紹介した。
だが、実はイチローに取材する過程で、私はもう1人の猛者(もさ)に出会っていた。打率4割を誇るイチローに対して、なんと彼はマッチングアプリ「T」を通じて出会った異性と、百発百中でベッドインに成功。コロナ流行をものともせず、今年1月から5月までに10人近くの女性と会ってきたという。
毎回、渋谷の東急百貨店前で相手と待ち合わせて円山町のホテル街に消えるという33歳の彼を、ひとまず「東急百太郎」と呼ぶことにしよう。
細身で筋肉質の爽やかイケメンだったイチローに対して、百太郎はビールが大好きで毛深めの体質。肌ケアやジム通いにもそこまで熱心ではなさそうで、良くも悪くもリアルな33歳の地方公務員という印象だ。取材当日も、職場帰りらしく白ワイシャツを汗でにじませて錦糸町にやってきた。
コロナのなかで欲望に生きる彼が到達した境地とは。隅田川のイチロー以上に無軌道な日々を送っていた百太郎の話に耳を傾けてみたい。
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──百太郎さん、こう言っては失礼ですが、決してイケメンではないですよね。高校のクラスの男子20人のなかで11番目……という印象です。清潔感についても、大卒の男性社会人として日常生活が送れる水準はクリアしているけれど、爽やかとまでは言えない。
百太郎:ひどい言われようですねえ(笑)。確かにそうなんですが。
──その百太郎さんが、なぜ隅田川のイチローを上回る数字を上げているのか。念のため聞きますが、法的に問題がある手段を使ってはいないですよね。
百太郎:もちろんですよ。LINEなんかで事前にメッセージのやりとりを重ねていることが前提ですが、僕の場合は相手と会う前に「ホテル行くけどいいよね?」と尋ねていますね。
──面識がないのに? それでホテルに行く女性がいるわけですか?
百太郎:はい。もし相手が「ちょっと食事してからがいい」と言ったときは「僕は飲むとできなくなるから」と言えばオーケーです。あとは東急百貨店の前で待ち合わせて、10分後には円山町のホテルに。
──それは女性側の自由意志に基づく行動なんですよね? なぜ誘いに応じるのか、私の理解の範囲をこえているんですが……。
百太郎:自由意志ですね。しかも、実はルックス面でも、外を一緒に歩くのを躊躇するような相手には当たったことがないんです。年齢も僕と同年代のアラサー女性なんですよ。
プロフィールを異性にしてみた
──なにからなにまで意味不明ですが、順を追って尋ねていきましょうか。まず、百太郎さんがマッチングアプリを使うコツから。
百太郎:コツはありますよ。僕は最初、事情を知るためにわざとプロフィールを女性にして登録してみたんです。それで、「キモい」と感じる男性側のメッセージ文体やプロフィールを調べて、自分はそれと同じことをしないように気をつけました。
女性設定でサイトに登録すると、気持ち悪い男性ユーザーを山ほど見ますよね。最初のメッセージから「やらせて」と書いてきたり、プロフィール写真が上半身裸で筋肉を見せつけていたり。
──前回登場した隅田川のイチローも「上半身裸の筋肉写真はウケが悪い」と同じことを言っていましたね。ところでイチローの場合、本人のプロフィール欄に顔写真を掲載していましたが、百太郎さんの場合は?
百太郎:カピバラです。
──カピバラ? 南米に生息する齧歯類の?
百太郎:はい。顔写真はカピバラ。あとは、うちの窓から撮った夜景とかです。それでいいんですよ。「カピバラかわいい」「景色きれい」で、充分にいけます。
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