CM登場回数1位の「菜々緒」 演技の幅も広がって今後増えそうな役柄は?

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 女優でモデルの菜々緒(31)の値打ちが上昇一途を辿っている。木村拓哉(47)主演の連続ドラマ「BG~身辺警護人~」(テレビ朝日)ではキーパーソンの一人である女性ボディガードの菅沼まゆ役を好演する一方、CMで目ざましく活躍。この5月、CMに登場した回数が一番多かった芸能人は菜々緒だった。

 菜々緒をテレビで観ない日はないはず。5月中に放送された菜々緒の出演CMは計7868回にも上る(関東地区、ビデオリサーチコムハウス調べ)。その数は全芸能人の中でトップだ。2位で計5492回の上戸彩(34)を大きく引き離している。

 菜々緒と広告・CM契約を結んでいる企業は計10社。どうして菜々緒がスポンサーから引っ張りだこなのかというと、その理由の一つは美貌と抜群のスタイルを兼ね備えているからに違いない。

 例えばサントリービールのノンアルコール飲料「オールフリー」のCMは菜々緒でないと難しいはず。菜々緒は体操選手ばりの前屈や上体反らしを行い、サーフィンに興じている。

 波の映像は合成とはいえ、スタイルが良くて柔軟性も高くないと、このポーズは無理だ。自宅の内外で日々、トレーニングを欠かさないという菜々緒の本領が発揮されている。

 このCMでは写真集などで見せる「菜々緒ポーズ」も披露。どんなポーズかというと、長い脚(股下85センチ)を交差させながら前屈し、ヒップを突き出すというものである。やはりスタイルの良さと高い柔軟性が求められ、そうでないと至難の業である。

 ドSの乙姫様に扮しているKDDIのCM「au 三太郎シリーズ」も別の意味で菜々緒らしい。迫力満点。菜々緒以外にドS乙姫が相応しい女優は思い浮かばない。このCMは「CM総合研究所」が調べた6月の銘柄別CM好感度調査で1位に選ばれている。

 美脚を惜しげもなくさらしているのが、着圧ソックス「メディキュット」のCMだ。これも菜々緒以外では難しい。なにしろ美脚をつくるための商品なのだから。

 ほかにもブランド品買い取りの「ブランディア」(デファクトスタンダード)などのCMに出演中。月間のCM放送回数が8000回近くに達するのもうなずける。もはや新CM女王と呼んでもいい存在だ。

 とはいえ、菜々緒の魅力はルックスだけではない。企業は芸能人をCMに起用する際、認知度やイメージ調査を徹底的に行う。イメージの悪い芸能人をCMに使う酔狂な企業はない。なので、現在の菜々緒は好感度もかなり高いと考えて間違いない。

 過去には演じた役柄によってイメージ面で損をしていたと思われる時期もあった。ファッション誌を舞台にしたフジテレビのドラマ「ファーストクラス」(2014)で性悪な編集部員・川島レミ絵を演じて以来、悪女役が続いたからだ。もっとも、最近は「菜々緒の役柄と素顔は別」という認識がすっかり浸透した。

 菜々緒に対する見方があらためられた理由の一つは、バラエティー番組での飾り気のないトークだろう。例えば3月24日に「家事ヤロウ!!!3時間SP」(テレビ朝日系)に出演した際、バカリズム(44)から「結婚願望あるんですか?」と問われると、「私はたぶん結婚しないだろうなと思ってます」と答えた。

 その理由を「人と一緒に住みたくない」と説明すると、バカリズムらは大爆笑。本音かもしれないが、女優らしからぬ突飛な答えだった。この発言に限らず、役柄を離れた菜々緒の言葉は自然体だ。

 2017年11月26日放送の「情熱大陸」(TBS系)も菜々緒の株を上げ、ファンの間では語り草になっている。スタッフに密着された菜々緒は、「『悪女と言えば菜々緒』といわれるのは光栄。スタッフから100求められたら、120以上を返したい。見てくれる人の心を揺さぶりたい」と胸の内を吐露。プロとして嫌われる覚悟を示した。この潔さが共感を集めた。

 抜群のスタイルも好感度の高さに影響しているのは間違いない。身長172センチで9頭身。体重等は公表されていないものの、巷では「完璧ボディ」などと称されている。

 となると、「女性たちの支持が厚くなる」というのが今のエンターテインメント界の定説なのだ。同性にとって憧れの的になるからである。事実、ローラ(30)や田中みな実(33)ら同じくスタイル抜群のタレントは一様に同性のファンが多い。

 株式会社明治が昨年11月、働く女性500人を対象に「理想の“美ボディ”を持つタレントは誰か」と尋ねたところ、1位に輝いたのが菜々緒。2位の長澤まさみ(33)、3位のローラを抑えた。菜々緒の姿貌は文字通り売り物になっている。

 菜々緒が芸能活動を開始したのは共立女子大に在学していた2009年ごろ。総合格闘技団体「戦極」でラウンドガールをやったり、レーシングチーム「TEAM YOSHIKI」でレースクイーン「ROCKSTAR Girl」を務めたり。2010年にはファッション誌「non-no」の専属モデルになり、翌11年には同「GINGER」でやはり専属モデルを務めた。

 同年からは「サンデージャポン」(TBS)などバラエティー番組への出演も増えていく。当時からストレートなトークが持ち味だった。

 それから約9年。今の菜々緒の職業を街中で尋ねたら、大半の人は「女優」と答えるはず。レースクイーンのイメージは完全に消えたと言っていいだろう。「悪女オンリーの女優」という認識もないはずだ。転機となったのは昨年放送された「4分間のマリーゴールド」(TBS)に違いない。

 マリーゴールドの花が好きな天真爛漫な女性・沙羅に扮した。義弟・みこと(福士蒼太、27)は救急救命士で、手を重ねた人の最期の姿が見える。みことの能力により、沙羅は余命1年であることが分かるが、2人は禁断の恋に落ちる。切ないラブストーリーだった。

 平均視聴率は二桁に届かなかったものの、悪女っ気ゼロの女性を菜々緒が熱演したことが評判になった。放送開始前はSNS上で「似合わない」などという声もあったが、放送が進むうち、そんな声は掻き消された。菜々緒は「演技の幅が広い女優」という評価を得た。

 放送中の「BG~身辺警護人~」で演じている菅沼まゆはピュアな人間で、主人公の島崎章(木村拓哉)にシンパシーを抱いていたが、島崎と対立する劉光明(仲村トオル、54)に寵愛され、今後はどう転ぶか分からない。なるほど、善玉も悪玉もやれる菜々緒ならではの役柄である。どちらの側についても不思議ではない。

 「BG」で菜々緒が演じている菅沼は若きリーダーでもある。これが意外なくらいハマっている。菜々緒のシュッとした顔立ちや表情が強い意思を感じさせるからかもしれない。

 今後の菜々緒はオフィスを舞台にしたドラマでの管理職役が増える気がする。真矢みき(56)や吉田羊(46)らに続く存在になるかもしれない。

 菜々緒のサクセスストーリーはまだ続きそうだ。

高堀冬彦(ライター、エディター)
1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長。2019年4月退社。独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月27日掲載

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