マツモトキヨシが限定「ミルキー」チーズケーキ味を出す2つの事情

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食品スーパー化するコンビニ

 もう一点、マツキヨ限定味のお菓子からは、ドラッグストアの食品事情も見えてくる。日本チェーンドラッグストア協会の2019年度調査によると、ドラッグストア全店の商品分類別の売り上げは、食品を含む「その他」の伸長率が最も高く、前年比8・1%増だった。売上高は2兆1039億円で、初めて2兆円を突破してもいる。20年6月1日付「日本食糧新聞」は、コスモス薬品とゲンキーでは食品構成比が5割を超える一方、〈ココカラファインは1割台、マツモトキヨシHDは1割未満とチェーンによって差は大きい〉と報じてもいる。

「これまでドラッグストアでは、販売する医薬品の収益率が高いため、その分、食品を安く売ることができていました。通常、小売業の利益率が30%であるところ、医薬品は50%あると言われていますからね。食品の安売りで顧客を呼び込み、医薬品で稼ぐのが郊外型ドラッグストアのビジネスモデルだったのです。ところが、2014年に一般用医薬品のインターネット販売が解禁されるなど、最近は医薬品販売というドラッグストアの優位性が揺らぎつつあります。将来的には、コンビニで24時間、医薬品が買えるようになるかもしれません。こうした状況を受けた生き残り策として、各社ともに食品販売により力を入れているんです。ある種の食品スーパー化ですね」

 こうした状況は、マツキヨも同じだ。

「食品に力を入れるといっても、例えば郊外型店舗が主力のコスモス薬品が力を入れているのは冷凍食品です。これと同じ戦略を、都市型店舗が多いマツキヨがとれるかというと、売り場面積や設備の関係で難しい。野菜なども売りにくい。そう考えたとき、食品の中でも、賞味期限が長く売れ残りのリスクが低い加工食品、特にお菓子にマツキヨが力を入れるのは理にかなっています。限定味のお菓子導入も、そうした戦略の一環であることが考えられます」

週刊新潮WEB取材班

2020年7月26日掲載

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