コロワイド会長が32億円騙し取られた「M資金詐欺」 過去には朝青龍も被害に

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過去には朝青龍も被害に

 M資金とは、昭和の時代からたびたび繰り返されてきた詐欺手口である。「M」はGHQの経済科学局長だったマーカット少将の頭文字で、「GHQ」「皇室の隠し財産」などとバリエーションがあるものの、いずれも架空の巨額融資話であることに変わりはない。数千億、時には兆にのぼる額を「無担保・保証人不要」「超低利」で融資すると持ち掛けて相手を信用させ、その「準備金」などの名目で金銭を引き出すのが一般的だ。

「かつて半世紀前には全日空社長が融資話に手を出した責任を取って退任し、また俳優・田宮二郎を猟銃自殺へと追いつめた原因も、M資金被害だったとされています。ひと頃はこうした詐欺話を触れ歩くグループのメンバーは、全国で数千人ともいわれていました」

 とは、M資金に詳しいジャーナリスト。最近では「還付金詐欺」「ブラックドル」「マルタ騎士団の秘密資金」など、さまざまなバリエーションが派生しており、

「09年には元横綱・朝青龍が1億2千万円を騙し取られたと報じられました。また3年前には、当時のローソン会長・玉塚元一さんが資金提供を持ち掛けられたことも明らかになっています」(同)

 手を変え品を変え根を張ってきた古典的詐欺に、生き馬の目を抜く世界でM&Aを手掛けてきた海千山千の蔵人会長が、いとも簡単に引っかかってしまったわけだ。先の捜査関係者は、

「会長はもともと、M資金の存在自体を信じていた“M資金信者”といい、それを察知した犯人グループの一部が、すでに7年前にアプローチしている。そこでまず億単位の金額を詐取されているのですが、間を空けて17年、グループから“前回の話はまだ生きている”などと持ち掛けられ、信じ込んでしまったのです。今回、大金を騙し取られたことについて会長は、“身なりがしっかりしていて、話は本物だと思った”などと述べています」

 蔵人会長は17年9月、皇居を望む丸の内にあるビルの一室で詐欺グループと対面。この時、相手に「自社ビル」だと説明され、すっかり信用してしまう。実際にはレンタルオフィスを一流企業の会議室のように装っており、このレンタルオフィスを運営する会社のHPでは、丸の内の当該ビルの賃料は、「月15万円から」となっている。借主は当該住所で法人登記もできることから、グループは一般社団法人を登記。詐取した「費用」の振込先として活用していたのだった。

「会長はその口座に、18年12月まで計10回にわたって指定された額を振り込んでいた。ところが、最後の振り込み後に相手と連絡が取れなくなり、令和に改元直後の昨年5月、県警に刑事告訴したのです」(同)

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