「矢野阪神」の命運を握る…“助っ人”に依存した打線は「得策」ではない理由

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 開幕ダッシュに失敗したものの、徐々に調子を上げて7月14日には最下位を脱出した阪神。ここ数年の貧打を解消すべく、今年はオープン戦、練習試合から打線の中心にマルテ、ボーア、サンズという外国人選手三人を起用する方針を打ち出している。現在はマルテが故障で戦列を離れているものの、復帰すればまたMBS(マルテ・ボーア・サンズ)の並びが復活する可能性は高い。しかしここまで外国人選手に依存した打線で果たして勝つことができるのか。過去の事例から検証してみたい。

 まず外国人の野手三人が同時に出場することが可能になったのは2002年のシーズンからである。それ以降の18年間で、外国人野手三人が揃って規定打席に到達したのは2005年のソフトバンクと2017年の楽天の2チームであり、それぞれの三選手の成績は以下の通りである。

【2005年のソフトバンク】
ズレータ:131試合 147安打43本塁打99打点0盗塁 打率.319
T.バティスタ:135試合 147安打27本塁打90打点3盗塁 打率.263
J.カブレラ:131試合 135安打8本塁打58打点3盗塁 打率.297

【2017年の楽天】
ウィーラー:142試合 147安打31本塁打82打点7盗塁 打率.271
ペゲーロ:120試合 130安打26本塁打75打点3盗塁 打率.281
アマダ-:121試合 99安打23本塁打65打点0盗塁 打率.237

 ちなみに、チームの順位は2005年のソフトバンクはプレーオフ(当時)でロッテに敗れて優勝を逃したが、勝率は1位。2017年の楽天は3位といずれも好成績を収めている。事例は極めて少ないとはいえ、外国人野手三人がしっかり機能すれば、上位進出の可能性は高いということが言えそうだ。

 ただ、2005年のソフトバンクについては、松中信彦、城島健司という長打力のある日本人選手が控えており、J.カブレラについてはメジャーに移籍した井口資仁の穴を埋める二塁手として獲得した選手であり、成績を見ても長打は残していない。

 そうなると、今の阪神に近いのは2017年の楽天となるだろう。この年の楽天は茂木栄五郎が17本塁打、島内宏明が14本塁打を放っているものの、日本人で安定して長打を期待できる選手は不在で、開幕からしばらくは2番ペゲーロ、3番ウィーラー、4番アマダ-という三人を並べるオーダーで戦っている。そしてチーム全体の135本塁打のうち、約6割にあたる80本塁打がこの三人によって記録される結果となった。

 阪神も昨年の本塁打数トップが大山悠輔の14本ということを考えると、長打は外国人選手に頼るしかないという方針も分からなくはない。ただ、阪神の過去の外国人野手を見てみると、ファンの間ではいまだに“神様”とも言われるバース以降で当たりと言えるのはオマリー、アリアス、ゴメス、ブラゼル、マートンくらい。二人以上が揃って活躍したのはマートンとブラゼルのいた2010年だけである。

 阪神以外にも今シーズンはDeNAがソト、ロペス、オースティンと外国人野手三人体制で臨んでいるが、ここまではロペスの調子が上がらず、オースティンも故障で離脱している。外国人選手についてはよく『宝くじ』とも例えられることがあるが、三人が揃って活躍するのはまさにそれ並みの確率と言えるだろう。

 また、2017年の楽天はこれだけ外国人が機能しても3位にとどまっており、さらに翌年を見てみると外国人野手三人が揃って大きく成績を落とし、チームも最下位に沈む結果となっている。この結果を見ても、外国人野手に頼った打線で戦うことは、中長期的に見ても得策ではないと言えるだろう。

 そんな状況の阪神だが、数少ない長打が期待できる大山がマルテの負傷の間に大活躍を見せて、中軸として相応しい成績を残している。ただ、マルテが戻ってきた場合はポジションが重なるため、外国人野手三人を並べようとすると、大山の出場機会は自ずと制限されることになる。果たして、矢野燿大監督はどのような決断を下すのか。今後の阪神を占う意味でも大きなポイントとなりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月23日掲載

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