巨人を勝利に導いた「増田大」の驚くべき走塁テクニック【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人が4連敗したと思ったら、一気の6連勝で、貯金を今季最多の「9」とした。(20日現在)まだ24試合、残り試合は100近くあるが、ここにきて戦力層の厚さがものをいってきた。私が見る限り、チーム内の雰囲気が実にいい。独走も視野に入ってきたのではないか。

 坂本勇人、丸佳浩、岡本和真を中心に脇を固める戦力がよくやっている。北村拓己、石川慎吾、重信慎之介、吉川尚輝、それに増田大輝らが競争意識を持ってプレーに臨んでいるし、陽岱鋼、それに新加入のゼラス・ウィーラーが機能している。

 左翼の守備がしっかりしており、一発長打の魅力もある。左翼・亀井善行のサポート、さらに一塁・中島宏之の調子が落ちてきた際の代役だ。なによりも明るい性格のようでベンチを盛り上げている。ムードメーカーだ。

 それにしても増田大の走塁は見事だった。19日のDeNA戦(横浜)、9回1死一塁で坂本の代走で出場してすかさず二盗、さらに2死後、丸の二塁内野安打で本塁を狙った。二塁・柴田竜拓が本塁へ送球、タイミング的にはほぼアウトだったものの捕手のタッチをくぐりぬけて、頭から滑り込み、左手でホームベースを触った。技ありだ。

 セーフの判定にアレックス・ラミレス監督はリクエストしたが、覆らなかった。同点として岡本の勝ち越し本塁打を呼んだ。

 増田大、とにかくスピードがあるし、スライディングが速い。今季も6盗塁で失敗はない。こういう「足のスペシャリスト」がいると指揮を執る監督も思い切った手が打てる。

「守備と足にはスランプがない」と言われる。川上(哲治)さんの時代、私も調子が悪い時があったが、それでもレギュラーで起用してくれた。少々打てなくても守備と足があったからだ。

 例えば1死一塁、ヒットが出ても一塁走者に足がないと一、二塁止まりだが、足がある走者なら一、三塁とチャンスを拡大できる可能性がある。先頭打者として四球で出塁すればいろんな作戦が立てやすい。

 ヒットが3本連続で出ても点にならないケースがあるけど、足のある走者が絡めば2本で得点できることもある。長いシーズン、こういうのは大きい。増田大には「足のスペシャリスト」としてシーズンを通して頑張ってほしい。

 先発投手陣も菅野智之を中心によくやっていると思う。問題はやはり中継ぎ陣、特に抑えだ。宮本和知コーチは中川皓太、澤村拓一、大竹寛、高木京介の4人で回すプランのようだ。大量得点の場合はともかく、1、2点の僅差で迎えた終盤をどうしのぐかだ。

 いまのところは中川が頑張っているけど、ポイントは澤村だろう。前回も記したが、課題はとにかく制球力だ。簡単に2死を取ったかと思えば四球を連発する。先頭打者に甘いボールをやられてピンチを招く。ベンチは居ても立ってもいられないはずだ。

 私が投手コーチなら、試合前の調整で澤村には外角低めの真っすぐだけを投げさせる。それ以外は不要だ。徹底させる。投手の基本が分かっていないからだ。

 澤村の真っすぐはスピード、威力ともに抜群だ。スライダーもいいものがあるし、落差のあるフォークも有効な武器だ。ストライクを先行させて、ポンポンと打者を追い込めば、そうそう打たれる投手ではない。もったいないと思うしやればできるはずである。澤村には中継ぎ陣の中心に座ってほしい。こう思うから、前回に続いてあえて苦言を呈する。

 21日からはナゴヤDに乗り込んで中日3連戦だ。初戦の先発は菅野のようだが、ちょっと気になることがある。

 14日の広島戦(マツダ)、先発して5回を投げて109球、失点は0で勝ち投手にはなったものの、物足りなさを感じた。

 エースである。せめて7回は投げてほしかった。球数の多さもあったのだろう。ただ、慎重になり過ぎているのではないか。

 今季の菅野、変化球が結構多い。かわそう、かわそうとの意識が強い。もっと大胆に攻めてもいい。ひょっとして腰に違和感でもあるのか。昨年は腰痛で3度も出場選手登録を抹消されている。こんなことを考えてしまった。

 真っすぐがあってこそ変化球は生きる。とにかく打者を早めに追い込む。菅野らしい投球で先陣を切ってほしい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月21日掲載

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