“富士山噴火”で交通網崩壊、首都圏で大停電…驚愕のシミュレーション できる準備は

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降灰から生き残る術

 まさに八方塞がりの状況で、降灰の影響から生き残る術はあるのだろうか。

 防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏によれば、

「一番簡単にできる停電対策は、乾電池を買い集めておくこと。今なら大型の蓄電池も、ピンキリですが1万円から6万円の範囲で手に入ります。ホンダが災害用に開発したカセットボンベで発電できる『エネポ』(約12万円)を導入すれば、地震対策にも有効です」

 EV・ハイブリッド自動車も選択肢のひとつで、渡辺氏は三菱の「アウトランダー(PHEV)」を使った実験を試みている。1500ワットの電力が外部に供給可能な車で、ガソリン満タン(45リットル)なら木造2階建ての一軒家で10日ほど暮らせたそうだ。

「使う電気は最小限にします。冷蔵庫はいつも通りつけっぱなしでエアコンは就寝時のみ。あとは扇風機だけで過ごしました。時折テレビを観たり、スマホの充電も問題なく可能でした」

 他方で、スマホをはじめ携帯電話などの通信機器も、件のシミュレーションでは、〈降雨時に、基地局等の通信アンテナへ火山灰が付着すると通信が阻害される〉として、実質使い物にならない。そもそも、これらのIT機器自体にも灰が付着すれば故障してしまう。

 海外の噴火被災地にも足を運んだ経験を持つ渡辺氏は、こんな提言をする。

「噴火が起きたら、食品用のラップを手にとってください。すぐにパソコンや携帯の電源を落としてラッピングするのです。通信が不能な時は電源を入れず、灰が入らないところに保管しておく。そうしておけば、災害が落ち着いた後、問題なく使えると思います」

 では都市のインフラを管理制御するコンピューターは大丈夫なのか。心配は尽きない。改めて警鐘を鳴らすのは、日本地震予知学会会長で東海大学教授の長尾年恭氏だ。

「世界中に火山はありますが、今度の富士山噴火は人類が初めて経験する災害になると思います。IT社会になってから、富士山のような規模の火山が都市部の近くで噴火した例はない。その分、どんな被害が生じるかは予測不可能な部分があります。国は被害総額を2兆円と試算していますが、これは農作物など直接的な損失のみ。交通機関がストップするなど火山灰の影響により経済が被る損失は想定不能だとしています」

 予測のみならず、被害の規模も未知数という富士山大噴火――。コロナに大水害と気がかりは続くが、こんな時だからこそ、備えあれば憂いなしなのである。

週刊新潮 2020年7月16日号掲載

特集「こんな時に『富士山』が危ない!?」より

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