「将棋と囲碁」子どもにやらせるならどっち? 脳への効果は 「茂木健一郎」「萩本欽一」語る
認知症予防への活用術
もっとも、子どもたちに教えるオトナも、多少なりとも将棋や囲碁に親しむ必要があろう。そのメリットは多いと話すのは、認知症を専門とする医学博士で、近畿大医学部講師の花田一志氏(49)である。
「脳の9割は6歳までに完成すると言われますが、それ以降も発達しないわけではありません。相手の出方を窺うといった作業は、幾つになっても脳に刺激を与えてくれます。特に、脳機能を複数同時に活性化させれば認知症の予防に効果がある。将棋も囲碁も、対局中は相手の出方を窺う前頭葉に加え、目など知覚をフル回転させるので後頭葉もよく使う。過去の一手を振り返る将棋では、記憶を司る側頭葉も刺激されます」
やや将棋優勢に思われるが、どちらも甲乙つけ難いと花田氏は指摘した上で、
「認知症はアルツハイマー型など様々な種類がありますが、共通するのは脳の神経細胞が衰え死ぬこと。複数の脳機能に刺激を与えれば、残った網の目のような神経細胞が結びつき、死んだ細胞を補完しネットワークを再構築してくれる。その効果はどちらも高いのです」
ならばと、すでに高齢者を対象にした臨床試験が始まってもいる。
東京都健康長寿医療センターの内科医・飯塚あい氏(30)が解説する。
「2015年に横浜市の有料老人ホームで、認知症の疑いのある囲碁未経験者9人を対象に、週1回1時間計15回の囲碁教室を開きました。結果は、囲碁を覚えた後は脳の認知機能が向上する可能性が見てとれました。具体的にいえば、転ばないように注意しようといった機能や、会話で相手の言ったことを覚えて反応する機能です。MRIなどの画像検査でも、囲碁をしている最中は、脳の中で注意力、思考力などを担う前頭前野や、空間認知機能に関係する前頂葉が活性化したとの研究例もあります」
さらに16年から17年にかけ、新たに8人の高齢者を加え調査したところ、同様の結果が得られたという。
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