加害者に甘すぎる「少年法」改正案 年齢引き下げナシに被害者遺族「落胆しました」

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「足して2で割る」……。主張が対立する問題を解決する際にありがちな「落としどころ」である。しかし、「権利と義務」、あるいは「罪と罰」のバランス、すなわち、社会秩序の維持の根幹を問うこの問題に関して、そんな「政治決着」で済ませていいのか。通すべき筋を曲げてしまっていいのだろうか。

〈18・19歳の犯罪厳罰化、自公一致〉(6月25日付、朝日新聞)

〈18、19歳の重大事件 実名報道 容認方針 少年法改正で自公協議〉(7月3日付、朝日新聞)

 膠着化して久しい「少年法」の改正議論。それに風穴を開けるかに見える報道が相次いで為された。

 少年法改正について議論を続けていた、自民、公明両党の実務者協議が中間報告をまとめた。そこで、先のような方針が出た、というものである。

「両党は、この中間報告の扱いに非常にセンシティブになっていました」

 とは、議論の経過を知る、法務省関係者である。

「これを受け、自民党の法務部会で報告が行われましたが、この中間報告について書かれたペーパーは回収されたほど。中心となったのは、自民党が上川陽子・元法相、公明党が北側一雄・副代表です」

 報告の肝は二つある。

 ひとつは、18、19歳の「逆送」の範囲拡大だ。現行の少年法では、20歳未満の「少年」が事件を起こした場合、まずは家庭裁判所に送られる。そのうち16歳以上で、ある一定の要件を満たす場合は、家裁は原則、検察に事件を送らなければいけない(逆送)と定められている。現在、その要件は「故意に他人を死亡させた場合」、つまり、殺人や傷害致死罪などのケースに絞っている。それを今度は18、19歳の少年に限って広げようというもの。「1年以上の懲役・禁錮」、つまり、「強制性交」「強盗」などの犯罪も含めることが検討されている。

 もうひとつは単純だ。現行の少年法は、20歳未満について人物が特定できるような報道、「推知報道」を禁じている。つまり、実名や顔写真の掲載は禁止だが、18、19歳に限っては、これを解禁しようというもの。ただし、ある一定の重大犯罪で、しかも、起訴後に限るとする案が有力である。

 いずれも、少年にとって、従来より厳しい内容になる。ゆえに「厳罰化」との見出しが並んだのである。

 少年法改正の動きは、5年も前に始まった。

 そもそものきっかけは、2015年に起きた川崎中1リンチ殺害。少年3人が中1の男の子を冬の多摩川で泳がせ、リンチし、極寒の中に放置した、あの度し難い残虐犯罪をご記憶の方も少なくないだろう。しかし、加害者たちは少年法に保護された。これに世論が沸騰し、改正を求める声が世論調査で8割に。与党議員からも同様の声が上がった。

 また、そのすぐ後に、公職選挙法が改正され、18歳以上が選挙権を持てるようになった。民法も改正され、再来年からは18歳以上が成人となる。こうなると、少年法だけ20歳未満を対象とすることに整合性が取れなくなる、との声が出たのも自然の流れだ。

 この二つの動きが重なり、少年法の対象年齢を18歳未満に引き下げる案が浮上。法務省もまずは「勉強会」、次いで「法制審議会」にその是非を諮問し、以来26回に亘って議論が行われた。

 しかし、

「日弁連や裁判官OB、少年院や鑑別所の関係者などが“少年は保護すべき対象だ”と引き下げに断固反対。彼らの一部は法制審のメンバーにも入っていますから、議論は膠着し、未だ国会に提出できず。18歳成人の施行と同時期での改正は、難しいと見られています」(この問題に詳しいジャーナリスト)

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