韓国クラスター協会「新天地」 信者4千人の血を寄贈という奇妙な“贖罪“

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 コロナの感染爆発で注目を集めた都市といえば、中国なら発生源となった武漢、イタリアではロンバルディア州、そして、韓国の場合は大邱(テグ)ということになろう。大邱が他と異なるのは“クラスター教会”の存在。韓国で非難の集中砲火を浴びたこの宗教団体、この期に及んで奇妙な“贖罪”を打ち出したようで――。

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 7月初めに、日本のメディア関係者宛に届いたメールにはこう記されていた。

〈イエス様のように、血を与えることで、コロナウイルスによって苦しんでいる世界の万民が、その苦痛から解放されて欲しい〉

 送り主は「新天地イエス教会」の広報担当である。

 新天地はイ・マンヒ総会長(88)が1984年に韓国で創設したキリスト教系の新興宗教団体で、信者は20万人を超えるという。

「新天地はコロナが問題視されていた2月以降も大規模な礼拝を続けていました。信者への感染が確認されても、教祖であるイ総会長は“今回の病魔事件は新天地が急成長したことを悪魔が見て、これを阻止しようとして悪魔が起こした”と開き直っていたのです」

 とは、ソウル在住のジャーナリスト。その結果、

「大邱にある新天地の教会がクラスター化した。大邱全域の感染者のうち6割を超える4200人余りが新天地の信者だったことで、教祖が土下座する事態に追い込まれています」(同)

 ソウル市は教団幹部を殺人や感染症予防法違反の容疑で検察に告発し、教団本部へのガサ入れも行われた。

「6月18日には、大邱市が1千億ウォン(約90億円)の損害賠償を求めて教団を提訴。教祖の財産や大邱の教会の建物も差し押さえられています」(同)

 そんなジリ貧の宗教団体が“罪滅ぼし”に捧げたのが信者の“血”だった。

“830億ドル”の価値

 イエス・キリストの言葉に〈私の肉を食べ、私の血を飲む者は永遠の命を得る〉とあるように、キリスト教では血を重視する。

 それにあやかったのか、韓国で大罪を犯した新天地は、コロナから回復した信者4千人超の血液を寄贈すると発表した。新天地側は、4千人が1人当たり500ミリリットルの血液を寄贈すれば、アメリカの取引基準でおよそ830億ドルの価値があると豪語する。

 だが、感染症学が専門の中原英臣・新渡戸文化短期大学名誉学長は首を傾げる。

「コロナに罹った患者には抗体ができるので、血漿を用いた治療が効果をもたらす可能性はあります。北里柴三郎が馬を用いて破傷風の血清を作り、治療に役立てたのと同じ手法です。ただ、4千人といっても人間から大量の血漿を採取できるわけではなく、多くの患者を救う手段にはならないでしょう。コロナ対策で重要なのは治療薬とワクチンの開発に尽きます」

 新天地の日本支部に詳しい事情を尋ねても、

「私たちはプレスリリース以上のことは分からないんです。韓国の本部に確認しないと取材も受けられない状況でして……」

 と、歯切れの悪い対応。

 信者を命の危険に晒し、その生き血まで吸い上げることを贖罪とは呼ぶまい。

週刊新潮 2020年7月16日号掲載

ワイド特集「この人たちの『新天地』」より

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