巨人・楽天「電撃トレード」に続くのは?埋もれた“4人の余剰戦力”を狙うべき球団

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 6月25日、巨人と楽天は池田駿とウィーラーの交換トレードを、そして7月14日には高田萌生と高梨雄平の交換トレードを立て続けに発表した。同一球団同士のトレードが短期間に連続で行われるのは異例のことではあるが、まだ若い高田以外の三人については、すぐに活躍できる場を与える意味合いも強いと考えられる。そして、彼ら以外にも、実力はありながらも、チーム事情でベンチや二軍でくすぶっている選手は確かに存在している。今回はそんな出場機会をぜひ与えてもらいたい“余剰戦力”となっている選手を狙うべき球団とともにピックアップしてみたい。

 まず育成が難しいと言われる捕手で、他球団であれば確実に一軍戦力となるだけの実力を備えているのが磯村嘉孝(広島)だ。2010年のドラフト5位で広島に入団。攻守ともに着実にレベルアップを果たし、昨年は自身最多となる65試合に出場して30安打、4本塁打、21打点と結果を残し、守備面でも3割近い盗塁阻止率をマークしている。

 しかし、チームには3年連続ベストナインの会沢翼が正捕手として君臨しており、成長著しい若手の坂倉将吾とベテランの石原慶幸の存在もあって開幕から一軍のベンチにすら入っていない状況なのだ。さらに、二軍でも2017年のドラフト1位である中村奨成が好調ということもあって、現時点では二番手という立場となっている。そんな限られた出場機会でも二軍では格の違いを感じさせる成績を残しているのは見事だが、今年で28歳という捕手として伸び盛りの年齢を考えると今の処遇はもったいないと言わざるを得ない。

 他球団に目を移すと正捕手の中村悠平、新加入の嶋基宏が相次いで故障で戦列を離れているヤクルト、開幕直前に腰を痛めた影響で田村龍弘の調子が上がっていないロッテ、若月健矢が好調とはいえ、捕手全体の層が薄いオリックスなどは磯村がいればかなりのプラスになることは間違いないだろう。

 捕手以外の野手では、昨年オフに大型補強を敢行した楽天で“余剰戦力”が目立つ。特に気になるのが外野陣だ。現在一軍ではセンターの辰己涼介、レフトの島内宏明が固定で、ライトとDHをブラッシュとロメロを入れ替えるという形をとっている。さらに、ベンチには山崎幹史、小郷裕哉が控えている状況だ。

 そんな中で出場機会に恵まれていない実力者が田中和基だ。プロ入り2年目の2018年には規定打席に到達し、112安打、18本塁打、21盗塁という見事な成績を残している。昨年は故障もあって成績を大きく落としたが、今年はここまで二軍で好調な打撃を見せている。攻守ともに少し粗さはあるものの、三拍子とパンチ力を兼ね備えた外野手であり、出場きかいさえ与えれば輝きを取り戻す可能性は高いだろう。

 同一リーグではあるが、外野手が手薄になっている西武、またトップバッターが固定できないオリックスや、アルモンテが故障離脱して平田良介も不振で、大島洋平以外の外野が固定できていない中日などは獲得を検討しても面白いだろう。

 ウィーラーのように外国人枠の問題で、二軍暮らしが続いている選手では、まずメヒア(西武)が思い浮かぶが、巨人からの獲得の打診を断ったと言われており、放出は考えづらい。それ以外の選手で面白そうなのがモヤ(オリックス)だ。昨年シーズン途中に中日からトレードで加入し、64試合の出場で10本塁打を放つなど、長打力には定評がある。

 今年はジョーンズ、ロドリゲスという新外国人選手が加入して完全に忘れられた存在となっているが、二軍では7月12日のソフトバンク戦で1号スリーランを放つなど徐々に調子を上げてきている。今年で29歳とまだ若さがあるのも魅力だ。外国人選手が2年続けてトレードで移籍するとなれば異例のことではあるが、アメリカではこのようなケースは決して珍しいことではない。王柏融、ビヤヌエバと二人の外国人野手が不振の日本ハム、もしくはアルモンテの離脱で打線が苦しい古巣中日などは需要がありそうだ。

 投手陣は台所事情が苦しいチームが多いが、強いて挙げるとすればやはりソフトバンクに余剰があるように見える。そんな中でも年々存在感が薄れてきているのが武田翔太だ。

 プロ入り1年目の後半からローテーションに入り、2015年からは2年連続二桁勝利をマークするなどエース級の活躍を見せていたが、翌年以降の3年間は6勝、4勝、5勝と停滞が続いている。今季もここまで二軍暮らしが続き、新外国人や若手の台頭に完全に押されている格好だ。

 ただ潜在能力は申し分なく、このまま消えてしまうのはあまりにももったいない。武田クラスの大物になると交換する相手も難しくなるが、先発を補強したい巨人などが思い切って大型トレードに動くなどすれば面白いことになりそうだ。

 トレードはチームの弱点を補強する一方で、選手の活躍の場を与えるという意味合いも必要である。今季は導入が見送られたが、現役ドラフトの議論が進んでいるのも良い流れと言える。今シーズンは開幕が遅れた影響でトレード期間は9月30日まで延長されているだけに、選手に活躍や復活の場を与えるトレードが今後も行われることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月15日掲載

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