コロナ「第2波パニック」を煽るワイドショー 感染者急増のウラに10万円の見舞金

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4次感染までで止まる

 同じ日の同番組では、コメンテーターで同局の玉川徹氏もまくし立てた。都内の感染者数について、感染経路がわかる人数が赤、感染経路不明者数が青で示されたグラフを見ながら、

「青い部分がどんどん増えていくのかなと思うんです。そうなると全体の赤い数も、200では済まなくなるだろうと思っています」

 と、どんな専門知識に依拠するのか不明ながら、今後は感染者が急増すると予測。さらに「秋冬じゃなくても、第1波レベルのことは起こるんじゃないかと思ってましたんで」と、自身の見識を誇らしげに語ったのち、国内の観光需要を喚起する政府の「Go To キャンペーン」を、こう一刀両断にした。

「この(感染者が増えるという)状況をまったく考えてなかったということでしょ、国は。第2波はどうせ冬なんだから、それまで大丈夫だろうと思ってたんでしょうね。政府はそういう認識だっていう、その辺がもう私の不安をさらにかき立てるんですね」

 いったい源泉がどこにあるのか不明だが、玉川氏の揺るぎない自信は、次の発言からもわかる。

「だれもがこうやってね、一生懸命テレビ見ているわけじゃないんでね。少なくとも僕らはこれ(新型コロナウイルス関連の特集)を毎日やっているわけで、毎日変化を頭のなかに入れているわけで、だからこそ見えてくることがあるんですよ。だけど同じ認識を国民全員が持っているとは、考えない方がいい」

 真実や真相は自身の手元にだけある、という傲慢さが強く鼻につく。こうした言辞が心に刺さった人たちが、無意味な不安をかき立てられ、恐怖におびえることを思うに、テレビの罪は計り知れない。

 ほかの番組も、「すでに第2波の到来」という取り上げ方が目立つが、専門家たちはいまの状況を、どう見るのか。感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師が語る。

「感染者が増えたとしても、医療リソースにどれくらい負担がかかるかという点が重要です。軽症者は入院させないようになって、そこにマンパワーとコストがかからなくなりました。しかも重症者が急増している状況ではないので、医療の逼迫度は低いと思う。新たな感染者は若い人に多いため重症化しにくいのも、医療への負担を軽くしていると思います」

 第2波との関連では、

「いま感染者が増えているのを第2波とは考えておらず、第1波の残り火だと感じています。第2波が来るとしたら冬で、その際の感染者の増え方はこんなものでは済まないと思うし、心筋梗塞などが増える時期で、医療リソースも逼迫しかねない。それに備えることが大事なのに、いまの状況を第2波だと強調すれば、いまの波をコントロールしたときに第2波を抑えたと勘違いしてしまう」

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授も、いまの感染状況を、

「大部分は夜の街で積極的に検査した結果なので、第2波と呼べるほど大きな流行ではありません」

 と断言。さらには感染者数が今後、減少すると読み、その根拠をこう語る。

「夜の街でくすぶっていたものが5月末から6月に広がり、収まってきたところです。私が新宿のホストクラブ経営者に聞き取りをすると、最も感染者が出た時期は終わり、いまは下火だと話していました。新宿でピークアウトしているので、神奈川や埼玉に広がっていた感染も、近日中にピークアウトしていくと予想しています。大阪のクラスター調査では4次感染までしか確認できませんでした。つまりホストから客のキャバクラ嬢や風俗嬢、次にその客、そこからだれかに感染しても、そこで止まる可能性が高いのではないか。それにホストは一人暮らしや寮生活が多く、高齢者にうつす危険性は低い。電車通勤しても車内ではマスクを着用し、大声で話さないので、人にうつすリスクは非常に低いと思います」

 メディアがバイアスをかけることで悲観的な見立てばかりが喧伝されているが、専門家の科学的なデータにもう少し耳を傾けてみてはどうだろうか。

週刊新潮 2020年7月16日号掲載

特集「『ホスト感染者』増産の裏に『10万円』のエサ! 『第2波パニック』の作られ方」より

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