コロナ「第2波パニック」を煽るワイドショー 感染者急増のウラに10万円の見舞金
ホストが感染する理由
山口さんが続けるには、
「“夜の街”と一括りにされていますが、具体的にどういう場所で、なにが行われているのか、実態が伝えられていません。現状では、たとえば池袋を歩くだけでも危険だ、と感じられてしまうなど、いたずらに私たちを不安にさせています」
そこで、まずは夜の街の実情を掘り下げたい。日本水商売協会の甲賀香織代表理事が話す。
「新宿にはホストクラブが200~250くらいあって、従業員に一人でも陽性者が出ると店全体がPCR検査を受ける、ということが進められています。もともとホストクラブやキャバクラは、感染者が出ても隠す傾向にありました。スタッフは自分のせいで店が潰れると考え、症状が出ても言い出せない。そこをなんとかするために、新宿区は感染者が出ても店名を公表せず、休業要請もせず、陽性者1人10万円を給付する、というやり方です。ホストにすれば、それでなんとか検査を受けにいくという感じだと思います」
ホストの感染者が増えた背景には、10万円の「エサ」があったというのだ。前出の都の担当者は、
「これは新宿区独自の取り組みで、予算も新宿区が組んでやっています」
と言うので、前出の新宿区の担当者に確認すると、
「10万円の見舞金はまだ原案段階で、近く詳細が決まる予定ですが、申し込みも始まっていません」
だが、内々にはホストに伝えられているという。PCR検査をなかなか受けさせてもらえない新宿区民にすれば、釈然としない気持ちが残りそうだが、地下に潜りがちなホストを振り向かせるためにはやむを得ない出費だということか。
ところで夜の街のなかでも、なぜホストクラブで感染が広がるのか。甲賀代表理事が続ける。
「ホストクラブの顧客の中心はキャバクラや性風俗で働く女性。勤務時間がかぶるキャバクラ嬢より性風俗のほうが多く、普段から常に人と濃厚接触している彼女たちは、店でクラスターが起きても通うのをやめません。顧客がコロナ対策をあまり求めないので、経営陣も対策に力を入れようとせず、基本的な対策もできていないホストクラブが多い。いま私たちが店を回って指導していますが、行政が放置してきたツケが回ってきていると思います。またホストは寮生活の人が多く、2段ベッドが置かれた6人部屋で暮らしていたりする。そういう生活も感染拡大の要因になっている可能性があります」
経済評論家の門倉貴史氏が補って説明する。
「ホストクラブはシャンパンコールなど大声を出すことが多く、3密にもなりやすい。また休業期間の損失を穴埋めするため、前のめりになっている部分もある。顧客のキャバ嬢はお気に入りのホストを一番にしたいからと、一晩に100万円使うことも珍しくありません。一晩に大金を使って大騒ぎするキャバ嬢を、コロナで経営が苦しいいま、感染対策だといって疎かにはできないわけです」
こうした夜の街を中心とした東京および首都圏の感染状況を、どう判断すべきか。朝のワイドショーの視聴率競争の勝者、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」では7月6日、白鴎大学の岡田晴恵教授が次のように指摘していた。
「先週水曜日(1日)の新宿区の陽性率、ホストクラブ従業員の集団検査を除いた数字で29・2%、前日は30%超えです。東京都は陽性率4・4%ですよね。でも、ここだけは20%超えています。2月、4月でさえ全国平均5・8%。この驚異的な数字をどう考えるか。つまり新宿区の市中感染率が相当高いんですよ。だから、これをやらないとダメなんですよ。そうしないと埼玉、千葉、神奈川をひっくるめて通勤通学圏が問題になりますので」
だが、この発言には重大な誤りがある。「集団検査を除いた数字」かもしれないが、夜の街を集中的に検査した数字には違いなく、市中に感染が蔓延しているわけではない。それを「市中感染」と言い切って不安を煽るとしたら、罪が重すぎるのではないか。
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