甲子園中止で「交流試合」 球児の汗をビジネスにするメディア、高野連の思惑

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 コロナ禍であえなく中止になった春と夏の“甲子園”に代わり、交流試合が行われることになった。球児への救済とはいうものの、大会方式や放映権まで、大人の思惑が錯綜していて……。

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 日本高野連の八田英二会長が交流試合の開催を発表したのは、6月10日。春のセンバツに出場予定だった32校を8月に甲子園へ招き、各校が1試合ずつ戦う形式だという。

 野球担当記者の解説。

「大会は『2020年甲子園高校野球交流試合』としていて、八田会長は“悔いのないように交流試合に臨んでください”と言っていますが……」

 実はこの大会自体、世間の風当たりを逃れるためでは、と記者は続けて指摘するのだ。

「春のセンバツは3月に、夏の選手権大会は5月に中止を決定しました。しかし、5月末に、文科省の萩生田光一大臣が、“何らかの形で機会が設けられることが望ましい”と語り、世間からも“中止にする必要があったのか”という声が噴出。今回の開催決定はそうした声に押された感は否めません」

 また夏の甲子園についても、各都道府県が代替として、独自の大会を開くべく調整してきた。

 例えば、東京都は7月から8月にかけ東西に分かれて大会を実施、大阪府も無観客のトーナメントを開催する予定である。

「交流試合と地方の独自大会で日程が被ってしまうところもあります」

 とは、高校野球に詳しいライターの菊地高弘氏。

「埼玉代表で交流試合に参加する花咲徳栄高校はどう配慮されるのか。また、そもそも代替大会を開催するかで福岡県では二転三転。地域によって対応がバラバラで、バタついている印象があります」

球児からの電話

 さらに、これまで関係者間で議論されてきたのは“中継”問題だ。

 さる高野連関係者が言う。

「通常、夏の甲子園はNHKに加え、ABC(朝日放送)が中継します。他方、春のセンバツはMBS(毎日放送)が決勝戦を放送している。今回の交流試合は夏開催でも、出場校はセンバツの代表校。朝日新聞と毎日新聞はともにこの交流試合を後援しており、ABCとMBSのどちらが中継するのか、調整が続いてきました。ABCは毎年放送する深夜帯の高視聴率番組『熱闘甲子園』を制作しているし、MBSは夏に中継できるチャンスでもありますから」

 球児の汗をビジネスに変えようと目論む大人たち。

 スポーツライターの小林信也氏はこう指摘する。

「結局、春夏の大会は新聞社の“事業”なんです。だから、交流試合開催は世間の風に加え、新聞社や大人たちの言い訳、証拠作りにも感じます。そもそも日本高野連は学生野球を教育の一環だと主張していながら、春のセンバツ中止から今まで、何ら教育的メッセージを投げかけていません」

 先日、ある高校球児から小林氏に電話がきたという。

「彼から甲子園に出たいという話はありませんでした。世間は甲子園がなくなってかわいそう、と勝手に騒ぎ立てますが、そう思っていない球児だっている。重要なのは高校生の立場になって野球ができる環境を整えることです」

 一体、誰の、何のための甲子園なのか。

週刊新潮 2020年7月9日号掲載

ワイド特集「お天道様はお見通し」より

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