消えた「9月入学」論争 グローバリズムに振り回される賛成派の浅はかさ

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世界の流れは…

 そもそも、「9月入学」とは誰が望んでいるのか。

「財界でしょう。彼らが叫ぶ論理は『グローバル化』です。“世界に合わせた方が効率的だ”と。しかし現在のグローバル化の実態とは、各国それぞれの違いを無視し、制度やルール、言語、文化まで画一化しようとしているだけの『多国籍企業中心主義化』に他なりません」

 そして、そもそも今回のコロナ禍で問われたことは、その「グローバリズム」そのものの是非ではなかったのか、と言う。

「グローバル化に伴う人や物の移動がパンデミックを誘発して被害を拡大させ、イタリアなど合理主義を追求して人員削減を行っていた国の病院で『医療崩壊』が起こった。むしろ今の世界の流れは“過度なグローバル化や合理主義は見直すべきではないか”というもの。『9月入学』賛成派は、グローバル化を謳いながらグローバルの流れをちっともわかっていない。あまりにみっともなく、情けないことだと思います」

 そもそも、経済的利益がすべてに優先されるべきだという考えそのものが、一つのドグマである。

「導入された明治時代から100年が経ち、『4月に新しい生活をスタートさせる』ということは、もはや世代を超えた日本人のひとつの共通感覚、言わば、土地に根差した風土ともなっている。経済的な効率だけを理由に一刀両断に切り捨てるべきものではありません」

 続けて言う。

「“そんな情緒的で感情的なものに意味があるのか”という反論もありますが、今回、日本でコロナの感染爆発を防ぐことができたのはなぜか。中国のようにプライバシーを無視し、国民をデジタルで監視・統制することもせず、罰則を設けて行動を制限することもできない国がコロナに対応できたのは、国民の世代を超えた、自発的でゆるやかな“まとまり”があったゆえではないのでしょうか」

 金がすべてに優先される、というのは浅慮の最たるもの。「9月入学」にそれ以外の依るべき価値観がないとしたら、そんな教育制度で学ぶ生徒こそ不幸である。

週刊新潮 2020年7月9日号掲載

特集「浅はかな『正義』」より

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