スマホ「中学校持ち込み」容認で何が起きるか “正しい使い方を指導”に尾木ママも疑問

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高速道路を無免許で…

「座間9人殺し」のような犯罪リスク。ストーカー、リベンジポルノ、イジメ。ネット依存にゲーム依存。学力やコミュニケーション能力の低下。ゼロか1か、「二者択一」のデジタル化した思考――。

 スマホの世界に入り浸ることの問題点は、今や、共通認識となりつつある。危険対応を理由に、生徒をより危険と隣り合わせにさせてどうするのか。

「よく私は、子どもにスマホを使わせることは、高速道路上をスポーツカーで無免許運転させるようなもの、と言っています」

 と、尾木ママが続ける。

「批判を回避するためか、持ち込みに条件を付けましたけど、どれも難しいでしょう。フィルタリング設定といっても、これを解除するのなんて、子どもたちにとってはたやすいことですよ。親より詳しいでしょ。それこそスマホで、『フィルタリング 解除』と検索すればやり方がすぐに出てきてしまいますよ。正しい使い方を指導? そんなの親や教師だってわからないですよね。今、それをどうやるかでみんな悩んでいるんじゃないかしら。現場のリアリティーに欠けるようなことばかり言っている」

 災害時や防犯のためというのなら、

「GPS機能付きの防犯グッズや、通話機能だけのケータイで事足りる。そもそも、災害の際、スマホが機能不全になることなんてよくあるでしょ。昨年の台風の時には、送電塔が倒れて2~3日通じなくなったところも。そういう事実を見ていないんですかね」

 と憤るのである。

 今後、文科省内の有識者会議が精査した上で、この方針を全国の教育委員会に周知する、という流れとなるが、持ち込みが広がればどうなるのか。

 授業中の使用は不可といっても、教師の目を盗んでやるのは当たり前。

「そんなことはないと本気で思っているのでしょうか」

 登校、下校時ももちろんスマホ。生徒にとって、これまで唯一スマホと引き離されていた「学校」という場においてまで、「スマホ漬け」となるのは明らかだ。

 それによって失われるのは、他者と語らったり、書を読んで先人たちから学ぶ、あるいは、己と向き合ったりする貴重な時間。「スマホは人間精神の廃物小屋」とまで述べたのは評論家の故・西部邁氏だが、そんな荒涼とした未来が目に浮かぶ。

「今回の決定には、スマホの弊害についての洞察や、リアルな分析があったのでしょうか。ただ利便性の持つ魔力に踊らされただけの判断のように思います」

「道具」であるはずのスマホの「道具」になる、日本の悲喜劇。

週刊新潮 2020年7月9日号掲載

特集「浅はかな『正義』」より

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