さいたま市が行った児童10万人「医療者への拍手」強要 形式的な“感謝”に意味は
「医療関係者への感謝を示そう」。コロナ禍でトレンド入りしたフレーズの一つだ。それ自体は否定すべきものではないが、大いに首を傾げたのは、それを10万人の「子ども」に強制的に行わせた「大人」がいること。大人数、拍手、指導とくれば、思い浮かぶのは……。
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教育関係者の間で知られた話に、「仏様の指」がある。
荷車がぬかるみにはまって苦しんでいる男がいた。ある人は励まし、ある人は手を持って引っ張り上げようとし……。最後に仏様が通りかかり、見えないように、すっと男の背中を押してぬかるみから出してあげた。男は自分の力で出られたと思い込み、自信を持つようになった。
これに照らせば、渦中の教師たちのしたことは……。曰く、「教育的意義はあった」と胸を張るが、後味の悪さは否めないのである。
問題の“教育”が行われたのは、さいたま市でのこと。通常登校が再開された初日に当たる6月15日、市の教育委員会の主導で、午前10時、全ての市立学校の生徒・児童約10万人が一斉に立ち上がり、手を胸の高さに上げて30秒間、拍手をした。その様子の一部はZoomを使って市内の医療機関に「中継」されたという。
「正直、医療関係者にとって、あんまり“励み”にはならなかったでしょうね」
と苦笑するのは、元大阪大学大学院助教授で、MP人間科学研究所の榎本博明代表である。
「形式的な儀礼を受けた、と思ってしまったんじゃないか。子どもにとっても、登校して初日にいきなり拍手しろと言われても、深く考える余地がない。“拍手で感謝したことになるのか”とか、“みんな一斉にやることに意味があるのか”とか、さまざまな疑問が思い浮かんだ子もいたかもしれません。先生たちだって、“意味あるの?”と思った人もいるかもしれない。でも、気持ちのない生徒や白けている先生だって、ぼくはやりません、うちのクラスはやりません、とはいかなかったでしょうね。『同調圧力』の中では……」
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