フランス警察が抱える人種差別問題 現地在住の日本人が今も忘れない酷い扱い

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警察官の差別意識

 でも、よく考えれば、警察官が高圧的な態度を取ることと、人種差別をすることは別の問題のはずです。本来なら、切り分けて考えるべきものでしょう。

 高圧的な態度を取るのは、デモで暴徒を鎮圧するなど、いわゆる取り締まりにおいて必要とされているのでしょう。ですから、警察だからと親切さや優しさを期待することがそもそも間違っているのかもしれません。

 では、なぜフランスの警察官には差別意識を持つ人がいるのでしょうか。

 人種差別に関しては、元々の思想の問題でもあります。フランスの警察官は半数以上が右派を支持していて、左派を支持する割合は10%以下という調査もあります。そして右派は「反移民」をスローガンに掲げています。

 フランスに移民として住む外国人にそもそも良い感情を抱いておらず、しかも移民の中にはオーバーステイ(ビザの期限が切れているのに帰国しない)など不法滞在者がいるのも事実です。そういった取り締まりも警察が行っているわけで、白人を職務質問しても自国民のフランス人である可能性が高く、自然と「外国人」の可能性の高い黒人やアジア人に目が行くのかもしれません。

 加えてフランスの近代警察の発祥は、植民地からの移民や貧民の統制、抑え込みであったと言われています。一般的に、移民は貧困層の地区に住んでいる人も多く、そのような地区は犯罪率が高いというイメージもあり、差別意識を持つ根底には移民問題や犯罪率などが複雑に関係しているのでしょう。

 しかし、肌の色だけで黒人やアジア人を何かと疑ってかかり、相手をはなから犯罪者扱いして威圧したり、ケガをさせたりすることは許されません。

 先日、パリで行われたトラオレ氏のデモに対し、「反白人主義に抗議する」と書いた幕を掲げる白人のグループが現れました。つまり、黒人が自分たちは白人に差別されている、というのは逆差別。白人を貶めている、というわけです。トラオレ氏のデモ参加者が、その幕を掲げた人たちに抗議し、殴り合いになっている様子がテレビで流れていました。

 人種差別へ抗議する人々と、それが逆差別だと主張する人々。市民に高圧的な警察と、警察の横暴に抗議する人々。それぞれが、自分は正当に扱われていないという不満を持ち、それを行動にうつすことが互いへの不信感や嫌悪感をさらに強めているように思えます。こうした状況を見る限り、人種間の溝も、警察と有色人種の市民との溝もなかなか埋まらないのでないでしょうか。

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月6日掲載

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