仙台上空の「未確認飛行物体」をスルーした日本の異常さ 爆弾指摘の専門家も

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 突如、仙台市上空に出現した未確認飛行物体。気象観測器か、ドローンか、はたまたUFOかと騒然となったが、行方知れずになってしまった。これが仮にテロだったら……。

 その物体が確認され始めたのは6月17日の午前4時頃。高度は2500メートル以上、白いバルーンに十字形の機器のようなものが垂れ下がっていた。あまりに異様な光景に、周辺住民から警察などへの通報が相次いだ。

 この物体は何なのか。

 三重大学大学院生物資源学研究科の立花義裕教授はこう推察する。

「形状が観測用気球であるラジオゾンデによく似ています。ラジオゾンデはバルーンにヘリウムガスを入れ、下にひもをつけて温度計や気圧計などを搭載したもの。上空10~20キロの気象を連続的に観測するために使います」

 として、海外から流されてきた可能性を指摘する。

「ヘリウムガスが漏れて、成層圏まで上昇せず、偏西風に乗って流されてきたのでは。当時の気象状況を見ると、中国東北部や朝鮮半島、ロシアのウラジオストクあたりなら、仙台にたどり着く可能性はあります」

 また、強風でも動かない時間帯があったことから、小型ドローンであったと指摘する識者もいる。とはいえ、宮城県警はヘリを飛ばしたものの、回収できなかったので正体は分からぬまま。

 県の危機対策課の担当者に聞くと、

「テロ目的ならば、こちらの管轄になるのですが、正体が分からないので……。県警では“あんなに高く浮いているものをどう回収すればいいのか”と議論になったそうです」

 危機対策とは思えないあまりに牧歌的な対応なのだ。

「ウイルスを…」

「悪意による可能性が排除されない限り、笑い話で済ませてはいけません」

 と元航空自衛隊員でジャーナリストの潮匡人氏。

「周辺国のドローンだった場合、爆弾を搭載している可能性だってある。実際、北朝鮮は韓国に偵察目的で何度もドローンを飛ばし問題になっています。今回の問題は物体が正体不明であること。捜索した上で、監視カメラがついていないか、などを確認すべきです。ドローンへの対処は第一に捕獲の訓練も行っている警察。その能力を超える場合は自衛隊でしょう」

 ところが、当の県警は、

「状況把握に努めましたが、確認には至らなかった」

 航空自衛隊松島基地も、

「対処の必要はないと判断して動いていません」

 と呑気なこと甚だしい。

 最後にジャーナリストの徳岡孝夫氏が警鐘を鳴らす。

「どこかに消えた、というのは何をされたか分からないという意味で恐ろしい。ウイルスを撒こうという考えの人がいてもおかしくないのですから」

 日本はオウム真理教によるサリンなど化学兵器の無差別テロを経験した唯一の国。実際にオウムはヘリで上空からサリンを散布する計画も立てていた。これを平和ボケと言わずして何と言うのか。

週刊新潮 2020年7月2日号掲載

ワイド特集「梅雨の晴れ間に」より

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