好調「ワークマンプラス」仕掛け人の正体 売上げを600億円増やした秘訣は?

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市場規模は4000億円

「革命的と言えるほどワークマンを変えたのは、創業者の土屋嘉雄前会長の甥に当たる土屋哲雄さん(現ワークマン専務、以下土屋さん)です。彼は東京大学経済学部を卒業後、三井物産に入社。スタートアップや新規事業を次々と手がけ、定年後の2012年に、土屋会長(当時)に招かれてワークマンに入社しています」(同)

 土屋氏は、最初の2年間、加盟店を若い社員と共にぶらぶら見て回ったという。

「当時、ワークマンはユニクロやニトリのように、PB(プライベートブランド)を持っていません。土屋さんはSPA(製造小売業)にならないと、これ以上の成長は望めないと判断し、2014年に新しい経営ビジョンを打ち立てます。職人中心だった客層を一般人にまで拡げることに。これまでワークマンは在庫管理にデータシステムを導入していなかったので、新たなデータシステムも構築するというものでした」(同)

 土屋氏は、一般向けのPBの開発に着手した。商品開発を担う商品部に、デザインが得意な社員を集め、外部からも人材を集めたという。

「土屋さんは、商品部の社員に、一般人向け商品であれば、何をつくっても構わないと指示しています。するとみな喜んで、商品開発に全力で取り組みました。ご自身は一般客でも着られるということを社員に見せるため、仕事でもプライベートでも、24時間PBの商品を着続けています。最初は、まあ許せる程度のデザインだったそうですが、娘さんから『ダサイ』と言われたそうです」(同)

 商品開発が進むと、デザインも年々良くなっていったという。

「2016年に、スポーツウエアの『ファインドアウト』、アウトドアウエアの『フィールドコア』、防水ウエアの『イージス』という3つのPBを正式に立ち上げました。もっとも、商品力は見違えるように向上したのに、売上は3~4%しか伸びなかった。そこで、売り方を100%変えることにしたのです」(同)

 そこで、3つのPBを軸にカジュアルウエアやレインスーツを集めた新業態の店を出すことに決めた。アパレル業界は、ユニクロやZARA、H&Mなどライバルが多い。

「土屋氏は、元々作業服に備わっていた耐久性や防水、撥水などの機能性を武器にすれば、ユニクロとも差別化できると考えました。さらにユニクロよりも低価格を押し出せば、他のスポーツメーカー、アウトドアメーカーとの競争も避けられると判断。高機能と低価格を両立するブランドは、市場にはなかったのです。土屋氏は、その市場規模を4000億円と見積りました」(同)

 そうして生まれたのが、18年に出店したワークマンプラスである。既存のワークマンも次々にワークマンプラスへと業態転換し、175店舗(20年3月末)まで増えた。会社全体の売上は、20年3月まで17カ月連続で前年比2桁成長。20年3月期の売上は1220億円と、初めて1000億円の大台に乗った。土屋氏がワークマンに入社した時の売上は609億円。彼が経営に加わってから倍以上になったわけだ。

「土屋さんは、ブロガーやユーチューバー、インスタグラマーでワークマンのファンを見つけ出し、彼らと一緒に商品開発を行うよう指示しています。広報担当者がネットで検索していると、子育てしながら毎週キャンプに出かける人気ママブロガーが、溶接工向けに販売している火花が当たっても燃えない綿のヤッケを着ているのを見つけました。なんでだろうと思っていたら、それを着れば中の服に煙のにおいがつかないとブログに書いてある。面白いと思い彼女を店に呼び、一緒に商品開発をしました。こういうインフルエンサー(世間への影響力が大きい行動をする人物)を何人も抱え込むことで、商品開発と商品の宣伝を行っています」(同)

 今年5月末現在でワークマンとワークマンプラスの店舗数は869まで拡大し、ユニクロを抜いた。

「2025年までに1000店の目標を掲げていましたが、すぐにも達成しそうなので、目標は1500店とか2000店になりそうです。土屋氏はワークマンプラスだけでなく、女性向け専門店の『ワークマンレディース』、雨の日用の専門店の『ワークマンレイン』、激安靴専門店の『ワークマンシューズ』などの業態も考えています。将来的には3000店を目指すようです」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年7月3日掲載

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