「新型出生前診断」の拡大で“ビジネス化”加速の懸念 儲けに走るクリニックの手口

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クリニックの域を超え“大宣伝”

 さらに「ある大手クリニックで、こんな酷いケースがあったんです」と仲田院長は訴える。

 くだんのクリニック「A」は、日本全国の主要都市に、NIPTを実施する医院を構える。NIPTは、医療機関で採った血を外部の検査会社に送り、そこで染色体数をチェックする過程を経る。相場の半額近い費用でNIPTを実施する「A」には提携する検査会社があり、HPでその会社について詳細な紹介がなされている。

 検査会社にもHPがあり、そこに並ぶのは「最新」「世界初」「当社のみ」といった、検査に用いるシーケンサー(検査機器)の性能をPRする文言だ。これが医療機関であれば、宣伝や広告文言は、厚生労働省の定める医療広告ガイドラインで規制の対象となる。ところが検査会社は医療機関でないため、対象には含まれない。大宣伝で集客ができるのだ。

 専門医からの見地からはさらに、

「クリニックのHPには、微小欠失症候群、微小重複症候群をチェックするために“染色体の『700万塩基以上』の欠失や重複も確認します”とあります。微細な異常も見逃しません、優れた検査です、ということを言いたいのでしょうが、微細欠失症候群における遺伝子の異常は『700万塩基』より小さいことがほとんど。つまり、この検査で染色体を隅から隅まで確認したところで、目の粗すぎるザルですくうようなもの。仮に陽性になっても、それがどういう意味があるのか、医学的に判断がつかないのです。にもかかわらず、『最新』などと謳ってPRするのは、1000円のワインを10万円の価値があると宣伝するようなものです」(仲田院長)

 という指摘も。

 問題は、検査会社の運営企業の取締役に「A」クリニックの院長が名を連ねている点だ。検査会社の提携先は「A」クリニックのみ。つまり事実上「A」が経営に携わる検査会社で、クリニックの域を超えた、大々的な集客が可能なシステムができあがっているのである。

「検査会社として『これは他所より良い検査です』と、どんどん宣伝し、クリニックに誘導できてしまうわけですよ。これは大問題でしょう。『A』ももともとは皮膚科で、産婦人科はもちろん、臨床遺伝の専門医でもない。NIPT実施施設を拡大すれば、利益優先のこうしたクリニックが、どんどん増えるでしょう。しかも遺伝子検査の知識のない『産婦人科医』が堂々と『認可』と名乗って……」

 倫理観を欠き“儲け”に走るクリニックが、果たして妊婦の十分なケアを提供できるだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年7月2日掲載

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