大塚家具が「ヤマダ家具」になる日 赤字77億円でも辞めない久美子社長の言い分

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大塚家具の今後

 それでも、久美子社長は「経営が間違っていた」とか、「退任します」などと言うつもりは全くないようだ。

「ヤマダから会長を迎え入れたとはいえ、久美子社長はまだ代表権を手放していません。決算短信には毎年のように、《約3兆円の国内家具マーケットにおける当社の市場占有率は未だ低く、成長余力は十分に見込める》とあります。市場占有率が低いから成長できるなんてことは、競合他社でも、新規参入者でも、誰にでも言えることです。成長余力があるかどうかは、着実な経営方針があるかどうかです。この5年間、久美子社長の経営方針は、中国とか、中古家具とか、家電とか、ブレまくりでしたが、赤字を出し続け、社長を継続することだけブレませんでした。通常、営業赤字は2年続いただけで、ビジネスモデルが完全に毀損しているということで、経営者失格と見なされます。彼女は赤字が2年続いて3年目に入った時に『3期連続赤字ならレッドカードです』とテレビで語っていました。しかし、3期連続で赤字となった際には、『(社長を)辞めるとか、そんなことを考えている場合じゃない』と変わっていた。開き直りも甚だしいというか、これが通用するなら、一生責任を取らなくても済むということです」(同)

 7月30日の株主総会を、彼女は切り抜けられるのか。

「ヤマダから会長はじめ役員を迎え入れたことで、市場では大塚家具の株価も上がって歓迎ムードです。そのための人事でもあるのでしょう。“好調”を謳ったリリースも株主総会に向けてのものかもしれません。これまでも、業績が落ちる中、横ばい以上なら“戻り基調”と株主総会で訴えてきましたからね。ただし、普通に考えて、4期連続で赤字なら、5期目をどうするか方策を出さなければならない。にもかかわらず、決算短信にも来期の業績予想は“不確定な要素があるため”出していません。5期連続となりかねない重要な局面にもかかわらず情報開示をしていないわけです。しかも、この5月からは店舗売上高の月次開示もやめてしまいました。小売業として月次を開示しないなんてあり得ないことです。もはや大塚家具は、単独で存続することは難しいので、ヤマダが救済するしかないでしょう。住宅メーカーのエス・バイ・エルがヤマダホームズになったように、大塚家具も完全子会社化されてヤマダ家具になる可能性は高いでしょう。もしくは合併により、新宿店の看板から“IDC OTSUKA”の看板だけが外されるか……」(同)

 昨年12月にヤマダの出資により、大塚家具のキャッシュは58億円に膨らんだ。だが、4月決算では36億円となり、4カ月で22億円が目減りしたことになる。大塚家具は4期連続の赤字に加え、営業キャッシュフローもマイナスとなり、7月末の有価証券報告書の提出後、2年間の上場廃止猶予期間に入るという。来期はどうなるのだろうか。

「大塚家具に限りませんが、コロナ禍が続く限り環境は悪いでしょう。大塚家具はこれまで、環境が良くても売上を落としてきたわけですから、環境が悪化したらさらに落ちることになる。ヤマダから経営陣が加わったとはいえ、大塚家具の成長余力というより、縮小余力がどこまであるのか、もはや凡人には計り知れぬレベルです。来期、利益を出せなければ、さすがの久美子社長もおしまいでしょう」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年7月1日掲載

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