TVドラマコラムで連載10年 吉田潮が振り返る“超主観”部門別ベスト3
本誌(「週刊新潮」)連載の名物コラム「TVふうーん録」が、いよいよ500回目。これを機に、コラム執筆者の吉田潮氏が過去10年を振り返り、イラスト登場回数ランキングや超主観に基づくドラマの部門別ベスト3を発表。十年一昔と言うが、その俳優陣の顔ぶれとは如何に――。
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10年。人間で言えば、生まれてから小学校4年生になり、一端(いっぱし)の持論を展開するようになる年月。ウイスキーであれば熟成して価格が1・5倍になり、家電製品なら買い替え時になる。そんな長期間、連載を続けることができて本当にありがたい。どこの馬の骨ともわからぬ雑草ライターに、下手糞にもほどがある絵まで描かせてくれて、新潮社からは本を出してもらえず、昇給も10年で1回のみとはいえ、心から感謝している。
この10年の間に東日本大震災が起こり、政治は腐敗し、私も3度目の結婚をし、うっかり骨折して絵を休載したり、愛猫が20歳で他界し、我が父は老人ホームに入り、そしてコロナ禍。テレビはかつての魅力も波及力も失い、くすぶっている。
サプリや健康食品のCM(胡散臭い社長本人が登場するものが多い)を繰り返し流し、SNSで跳ねた動画や写真を堂々と放送する。雑誌のスクープを後追いするかと思いきや、大手事務所や政権に忖度してか一切触れず。普段目にするネットニュースやSNSとは別世界。違和感を通り越して「乖離」を感じる。女性蔑視が根本体質の芸人番組や小動物動画の寄せ集め番組も観る気がしない。バラエティ番組を観なくなり、ドラマだけを執拗に漁る毎日。
もちろんドラマも課題は山積み。数字狙いの医療・警察・弁護士モノ連発による食傷の蔓延、同じ顔触れの主演俳優当番制度、アイドル優先・中身軽視、芝居の技量よりも姑息な話題作りやフォロワー数で決めるキャスティング。でもドラマだけは廃れてほしくない。
そこで、密かに死守していこうと思うことが3つ。一見賞賛の提灯記事に見えるが、実は1ミリも褒めていない、むしろ限りなく茶化すという愉しみを提供して、テレビドラマ離れを阻止すること。話題にならなくても役者の技量が光った秀逸なシーンは全力で喧伝すること。妄想キャスティングで脳内二次創作を愛でる悪趣味を広めること。そんなコラムを目指そうと思う。
10年間のMVBP
まずは、日本のテレビドラマ界の伝統を受け継ぐMVBPをまとめてみる。MVBPとは「Most Valuable 棒 Player」。海外ドラマではまずお目にかかることのない、世界基準でも希少な存在を称えよう。鉄仮面のごとく微動だにしない表情、あるいは抑揚なき一本調子や類まれなる滑舌の悪さ。比類なき技術を駆使し、雰囲気で押し切り、逆にその世界観をきっちり築き上げた名俳優たち10名である。
若手ホープ of 棒・福士蒼汰、演技すると動きがぎこちなくなり、関節がこわばる本田翼。大丈夫、諸先輩が拓いた棒道があるから。
ホウボウから反論されそうだが、キャリアの長い西島秀俊や竹野内豊も、カテゴリーとしては棒読み系だ。韓国で修業を積み、華々しく凱旋デビューした大谷亮平も棒。日本では「いい男」は棒でも許される土壌がある。密かに棒と思っていても、口にしたら女性陣から袋叩きに遭うので、黙っていた人も多いのでは。
逆に誰からも反論されない自信があるのは、東出昌大と真木よう子。誰もが認めるIPPON(調子)グランプリ。でも、このふたりはいろいろな意味で芸能界に必要な存在。疑問を抱かせ、波紋を広げて、心をザワつかせてほしい、末永く。
「不変」に一種の付加価値を見出す日本の芸能界において、外せないのは深田恭子。変わらざること山の如し。キョトン顔という十八番を守り抜く姿勢、応援したい。
そして、森昌子のモノマネが本人を超えちゃった気もする仲間由紀恵、国宝級の棒を誇る沢口靖子までくると、もはや「棒読みは日本独特の文化であり、伝統芸能の域」なのだと悟った。
茫漠と棒について考えていたら、次々と候補が浮かぶ。阿部寛も吉川晃司も松田龍平も棒読み系だ。雰囲気棒というか、うまい棒というか。もうキリがない。
MVBPなのでひとり選ぶべきだが、どの棒も価値ある大切な棒。とにかく全員に「ブラ棒!!」と賛辞を。
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