パソナ「竹中平蔵」会長の「利益相反」を許していいのか 経産省・電通・パソナの“3密”
持続化給付金事業の委託問題でその名が取り沙汰されているパソナグループは、接待攻勢で政治家や官僚を取り込み、勢力を拡大してきた歴史を持っている。会長である竹中平蔵氏について政治アナリストの伊藤惇夫氏に言わせると、
「まず一般論として、政府の政策決定に関わる人物が“利益相反”になりかねない民間企業の会長の椅子に座っていること自体に疑問を抱きます。持続化給付金の問題にしても、経産省・電通・パソナの三位一体で回している。政府が“三密を避けろ”と言うのなら、こっちの“三密”も避けるべきだと思います」
事実、竹中氏は2009年からパソナグループ会長でありながら、政府の未来投資会議や、国家戦略特区諮問会議で民間議員を務めている。
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彼の影響力が一気に増したのは、小泉政権下で“聖域なき構造改革”の旗振り役となってからだ。
「端的に言えば、竹中さんは“政商”以外の何者でもありません」
経済アナリスト・森永卓郎氏はそう断じる。
「竹中さんが金融担当大臣として推し進めた不良債権処理にしても、対象となった企業の3分の2はハゲタカに食われ、残りの3分の1は当時の経済財政諮問会議に協力していた企業に二束三文で買われてしまった。また、竹中さんは経済財政担当大臣時代に“製造業”の派遣労働を解禁した。戦後の口入れ稼業で労働者の賃金ピンハネが横行したことから、製造業は“聖域”として守られていたのですが、それが解禁されたことで業界大手のパソナが大儲けした。それからまもなく竹中さんはパソナに迎え入れられ、いまでは会長職に就いている。自分が利権を拡大したところに天下るなど公務員ならば決して許されない。竹中さんに何のお咎めもないことが不思議でなりません」
そうした批判を尻目に、20年以上にわたって日本の構造改革に関与してきた竹中氏は、いまもグローバル化を説き続ける。
ヒト・モノ・カネが軽々と国境線を越えるグローバリズムが、人々に恩恵をもたらしたことは否定できない。だが、それが超格差社会を招き、古き良き日本文化を破壊したのも事実。しかも、かつてないほど各国の結びつきが強化されたことで、今般のコロナ禍は瞬く間に全世界を覆い尽くし、経済に未曾有の打撃を与えたのは大いなる皮肉だ。そんな疫病禍でパソナは巨額の公共事業を受託しているのである。
著書『市場と権力』で「竹中平蔵」という人物を掘り下げたジャーナリストの佐々木実氏は言う。
「官から民へと民営化の旗を振り続けてきたのが竹中氏です。しかし、持続化給付金問題を見れば、巨額の民間委託で問題が起きても“民間同士の取引”を盾に企業は情報を開示しない。市場原理を働かせて効率化するはずが、実際は、特定の企業グループが社名を隠して利益を山分けするスキームだった。そこに竹中氏が会長を務めるパソナもきっちり入っている。政府ブレーンとして制度を改革し、関与する企業でその恩恵を受ければ、利益相反行為です。非正規雇用を増やし、水道など社会インフラの民営化を進める竹中氏は、社会を安定させる社会的共通資本を儲けの対象としか考えていない。コロナ後の社会を見据えた制度設計にまで口を出すようなら、百害あって一利なしです」
こうした点を質すため、竹中氏を直撃すると、
「いや、そういったことは会社を通してください」
と仰り、逃げるのみ。
コロナ禍を拡大させた張本人。その人物を会長に据え、政界実力者への饗応を繰り返す南部靖之パソナグループ代表。そして、この2人の“政商”の掌中には、日本再生を託された西村康稔経済再生担当大臣がいる。「李下に冠を正さず」の戒めはその耳に届くまい。