柴咲コウ言及「種苗法改正法案」で江藤農水相“俺を森雅子にするのか”と激怒

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江藤農水相「俺がつるし上げを食らう」

 この関係者が言う通り、農水省側は今回の法案の可決に確信を持っていたようで、自民党の農林族からも法案提出について「農家の権利保護に必要だ」として後押しを得ていたという。にもかかわらず、結果は法案提出を断念した。いったい何があったというのか。別の農水省関係者が事情を解説してくれた。

「江藤拓農水相が土壇場になって、『俺が森雅子(法相)みたいにつるし上げ食らったらどうするんだ!』と大反対したのです。今国会で提出するつもりだっただけに、肩透かしを食らったばかりか、肝っ玉の小ささがひんしゅくを買っていました」

 問題の江藤氏の発言を記者会見の記録から振り返ってみよう。まず5月19日の記者会見。(https://www.maff.go.jp/j/press-conf/200519.html

「(農家の)権利を守るということについてはですね、一刻の猶予もならないのではないか、と逆に思っています。これを先延ばしにしているうちにですね、UPOV条約には中国も韓国も入っています。ですからこういった国々に対して歯止めをかけていかないとですね、日本の農家の努力、それから得られる利益も守れないのではないか、ということを考えてですね、これをぜひ国会で審議をさせていただければありがたいなと思っております」

 かなり今国会での審議に前向きな様子がうかがえる。それが、わずか3日後の22日には「いろんな人に関心を持ってもらうのは嬉しいが、芸能人などのインフルエンサーの発言には誤解がある」「コロナで地方への説明が遅れた」と一気にトーンダウンする。
https://www.maff.go.jp/j/press-conf/200522.html

「芸能人であるとか、(中略)いろんなインフルエンサーの方がですね、例えば農家の経営状態であるとか、ある方はこの種苗法によって農家が非常に厳しい立場に追い込まれるんじゃないかと発言された方もおられると聞いておりますけれども、そういうことについては、誤解があると私は思いますよ、(中略)今回の種苗法について若干不幸だったと思うのはですね、(中略)もうちょっとこのコロナという事情がなければ、(筆者注・地方の農家に)重ねて理解を得られるような場面というのが作れたんだと思います。(中略)専門家ではない訳ですから。情報もですね、どこのニュースソースにアクセスするかによって、それはもう判断が変わることは、ままあることですから、誰も責めることはできないと思います」

 実は、この間の急激なトーンダウンには、5月21日の黒川氏の辞任が関係していると先の農水省関係者は解説する。

「当初は法案を提出しようと思っていた江藤氏ですが、黒川問題をめぐって森氏がガンガン攻められる様子を見て、『自分もああはなりたくない』と思ったのでしょう。始めのうちはSNSの怖さなんてわかっていなかったでしょうが、会期が1カ月近く残っている中で、次の標的になるのは避けたいという気持ちが働いた」

 今年3月に自民党農林族が主導した「和牛商品券」が「族議員の利益誘導」と猛烈なバッシングを受けたことも考え、江藤氏が慎重になったのは頷ける。まして、種苗法改正で自分が大臣として非難の矢面に立つことを考えれば、やすやすと法案提出などできまい。

 業界としては柴崎氏のツイートなど、江藤氏の言う通り「素人の誤解」に過ぎなかったのかもしれないが、法案提出をやめさせるとは、まさに芸能人ツイート恐るべしである。

松岡久蔵
ジャーナリスト。マスコミの経営問題や雇用、防衛、農林水産業など幅広い分野をカバー。『日本が食われる 』(彩図社)が好評発売中。https://www.amazon.co.jp/dp/4801304583/ref=cm_sw_em_r_mt_awdo_rd18Eb46X9C76

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月26日掲載

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