都知事選、後藤輝樹候補「今回の政見放送は自信作」 前回「異常すぎる政見放送」は史上2例目の大事件だった

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泡沫候補とインディーズ

 東京都知事選に向けて、選挙関連のニュースが増えている。

 すべてのメディア、多くの有権者にとって最大の関心事は言うまでもなく誰が当選するかである。ところがまったく別の視点から選挙を楽しみにしている人が少数ながら存在する。

「選挙マニア」――選挙そのものをウォッチし、研究するのが大好物という人たちである。

 これまでの研究成果を活かして、「死んだ男が立候補した都知事選」「選挙前になると人口が増える村」「選挙権が剥奪されていた島」などの珍奇なエピソードをまとめた『ヤバい選挙』(新潮新書)を著した宮澤暁さん(35)も選挙マニアの一人である。

 化学関連企業に勤める傍ら、選挙マニアとして活動する宮澤さんにその日常を聞いてみた。いったい、どんな事柄を追いかけているのか。

「大きな政党に属さない候補者、好事家のあいだではインディーズ候補といわれる人たちを探したり、調べたりしています。一般的には泡沫候補といいますが、自分としてはきっちり決めていて、まじめな意図を持って無所属や自分一人で作った政党に所属して立候補している人なのでインディーズ候補と呼ぶことにしています。

 ちょっと下世話なんですけれども、面白い人が多い。本当に面白い候補にはなかなか出会えないのですが、この人はという候補を見つけると現地に行き、演説なども聞いています」

史上2度目の大事件

 選挙を追っていて、ものすごく嬉しい瞬間もあるんでしょうか?

「ありますね。たとえば前回、舛添要一都知事が辞職して行われた2016年の東京都知事選では歴史的瞬間に立ち会うことができました。ご存じの方もいるでしょうが、『便利屋業』を称する後藤輝樹候補は、放送禁止用語を連発した政見放送を行いました。どんな内容でも、そのまま放送しなければならないところ、NHKは放送禁止用語の部分を音声カットしたのです。それで異様な政見放送が流れることになりました。

 政見放送は公職選挙法で規定されているPR手法であり、候補者に無断でカットした事件は、それ以前は1度だけしかありません。しかし後藤候補は裸のポスターを掲示するなどかなり目立った活動をしており、収録をした時点で『放送できるかどうか確認しますと言われた』などと発信していたことから、これは史上2例目になるのかもしれない、録画予約もしたうえで生放送で見なければと意気込んでいたのです。

 そして生で見終わった瞬間、私はその過激な内容と音声カットぶりに興奮して『いま私は歴史を見ているのだ、私は歴史の証人になった!』と叫んでしまったのを覚えています。

 ちなみに後藤候補はこうした派手なパフォーマンスやポスターで知られていますが、演説会で話を聞いてみると意外と真面目で、『ちゃんと考えて行動している』という印象を強く受けます。また、21日(日)に新宿の花園小学校で行われた後藤候補の演説会では、今回の政見放送は自信作であると熱意をこめて述べていたので、私としてはかなり期待をしています」

 7月5日、東京都知事選の投票日はどう過ごしますか。

「選挙日は、早起きをして投票所一番乗りをすることに決めています。何も入っていない投票箱の中身を見る『ゼロ票確認』を行ってから、投票を済ませます。帰宅すると二度寝をして、午後8時の投票締め切りを待ちます。開票速報と同時にテレビとパソコンをつけ、最後までしっかり見ていきます。

 誰が当選するかはもちろん、落選者も、誰がどこまで票を伸ばしたか、インディーズ候補の誰がいいところまでいくのか見届けたいのです。マニア仲間たちも票読みの答え合わせで盛り上がる時間です。

 最後まで見届けるために、国政選挙など、気合の入る選挙では翌日会社を休むことにしています。今回の東京都知事選もそうできるといいなと思っています」

 若者の投票率低下が嘆かれているが、マニアに楽しみ方を学ぶ人が増えたら、少しは事態が変わるのかもしれない。

 東京都知事選の政見選挙放送は、NHK総合で23日から始まっており、宮澤氏も注視している後藤輝樹候補の政見放送は、26日(金)22時30分から22時56分までの間に放送されることになっている。

デイリー新潮編集部

2020年6月26日掲載

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