金正恩後継は「与正」有力と断じるのは時期尚早 他に3人もいる候補者の名前

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与正と軍部の“溝”

 冒頭でご紹介した東亜日報の記事とは異なり、重村教授は金与正が軍を掌握しているとは見ていない。

 聯合ニュース(日本語電子版)は6月13日、「金与正氏 韓国側への武力行使示唆=批判ビラ散布に反発」の記事を配信した。

 記事では、金与正が《韓国側に対する武力行使を示唆した》とし、彼女が《金委員長と党、国から付与された権限にのっとって敵対事業に関する部署に次の行動を決行するよう指示したことを明らかにした》と伝えた。

 また産経新聞(電子版)は6月16日、「北朝鮮・開城の南北連絡事務所、爆破される」の記事で、北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部が16日、《今後、実行に向けた軍事的行動計画を作成し、党中央軍事委員会の承認を得る》と示したことを伝えた。

「金与正氏の『付与された権限にのっとって指示』したという発言と、軍の『党の中央軍事委員会の承認を得る』という返答から、軍に介入する与正氏に『あなたに指示される覚えはない』との反発が読み取れます。珍しい表現の不一致です。依然として軍の最高司令官は金正恩氏だ、との建前論を主張している。与正氏も軍も正恩氏を立てていることが分かります。仮に与正氏が軍を掌握しているような発言をすれば、彼女と敵対を牽制する勢力から『越権行為だ』と大問題になされる恐れがあります。そのために『全権を与えられた』とは言わず『付与された権限』とあいまいな言い回しになったのでしょう」(同)

 もし金正恩の健康不安説が事実ならば、北朝鮮は2つの大きな発表を世界に向かって行う必要がある。つまり、金正恩の病状を発表し、更に後継者を広報しなければならない。

 だが、その直前まで、平壌では後継者をめぐる激しい政治的暗闘が繰り広げられるだろう。

週刊新潮WEB取材班

2020年6月22日掲載

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